猪瀬都知事は大丈夫なのか、ちょっと危ないんじゃ――そんな声があちこちで上がっている。政治生命が、ではない。体調の話だ。
耳たぶから大粒の汗をポタポタ落とし、力ない声であいまいな答弁に終始する。かつての「ゴーマン」ぶりからは考えられない弱々しい姿に、「追い詰めすぎなのではないか」との声さえ出始めた。
座る席わからずマゴマゴ、手も震え…
2013年12月9日、議場に入った当初から、猪瀬都知事の様子はどこかおかしかった。
ダークスーツに、普段はかけない眼鏡という出で立ちで都議会総務委員会に現れた都知事だったが、どこに座っていいのかわからない様子でまごつき、職員に引っ張られるようにしてようやく着席する。黄色のファイルを携える手は、かすかに震えているようにも見える。
「おかしいだろっていうんだよ、そんなの。そんなの人間として、おかしいって言ってるんだよ!」
「ふざけるな――と、テレビの前で都民国民は、みんなそう言っていますよ」
自民の高木啓都議らは、語気も荒く都知事に詰め寄り続けた。日ごろなら、都知事も負けじと反撃したことだろう。しかし、口をついて出るのは、
「木村(三浩・一水会代表)氏から……えー、少し珍しいところへ連れて行くというような、まあ、ことで、付いて行ったということが実情で……」
「副知事になってから収入も減りましたので……」
「ひとつひとつのことってのは、意外と覚えてないんですよね……」
といった、「歯切れが悪い」というよりも、ほとんど気力を失ったような言葉ばかりだ。クローズアップされた「(5000万円を貸した徳田毅衆院議員を)僕は親切な人だと思いましたよ」という発言も、いつものふてぶてしさとは程遠い。
何より顔面を伝う多量の汗が、その「異常さ」を浮き彫りにしていた。議場に入った時点ですでに額には汗がにじんでいたが、質疑開始直後からその汗は耳たぶを伝い、スーツの襟にまで滴る。マスコミはこの光景を面白おかしく取り上げたが、もはや病的な姿とさえ言っていい。