特定秘密保護法案への反対論が盛り上がりを続ける中、新聞や雑誌はもとより、テレビ番組などでも、やや踏み込んだ立場から「反対」の立場を唱えるところが出始めた。
「今聞いてて、中谷さんが無神経にしか見えないんですよ」
自民党の中谷元副幹事長にこう食って掛かったのは、タレントの水道橋博士さんだ。「朝ズバッ!」(TBS系)のスタジオに、早朝とは思えないピリピリした空気が漂う。
「どこが『自由』『民主』党なのか」
2013年12月6日の「朝ズバッ!」には、衆院国家安全保障特別委員会で与党筆頭理事を務める中谷副幹事長を始め、民主党からは松原仁国対委員長、日本維新の会からは片山虎之助国会議員団政調会長、みんなの党からは浅尾慶一郎幹事長と、幹部クラスがそろって生出演した。
とはいえ法案成立に「賛成」するのは中谷副幹事長ひとりで、野党幹部は先を争って与党を批判する。番組側コメンテーターの与良正男氏(毎日新聞論説副委員長)はもとよりバリバリの反対派、龍崎孝氏(TBS政治部長)がある程度中立的な立場を取ろうとしているのを除けば、議論は中谷副幹事長への「集中砲火」の様相を見せた。
この日の「朝ズバッ!」は全体的に法案への反対色が濃厚で、出演したコメンテーターたちも3人全員が批判派だった。「世論の盛り上がり」も、国会前でのデモの映像とともに繰り返し言及される。日替わりの「アンカー」役を務めた水道橋さんは特に辛らつで、
「(法案の強行採決に)どこが『自由』『民主』党なんだと思いましたね」
「これだけ民意が反対の方向に盛り上がっているときに、ここまで強行するってのは……本当にこう、国民を舐めてるのかなあ」
とボヤキが止まらない。
そんなスタジオで中谷副幹事長は、「サイレントマジョリティーは支持している」「審議が不十分だというが、このままではエンドレス」などと終始繰り返す。しかし水道橋さんは、
「『エンドレスですよ』って、『エンド』だって決めてるのは中谷さんだけじゃないですか。それをなぜ今日……(成立が)今日ですよ。(反対論を)なぜこうはねのける、今(スタジオは)全員一致ですよ!」
と険しい表情で食い下がった。しかし中谷副幹事長は短く「そうですか」と応じたのみで、両者の間に議論が成立することはないまま番組は終了した。
「これが、決める政治の姿か」
TBSではこのほか、昼の時間帯のニュースコーナー冒頭でも佐古忠彦アナウンサーが、
「これが、決める政治の姿だということなんでしょうか」(4日)
「この政治の議論は、本当に社会の意志と向き合ったものだったのかどうか、多くの疑問を残したまま、またあの光景が繰り返されそうです」(5日)
といった論評を連日語っている。他局の「与野党の攻防が最終局面を迎えています」(フジ、テレビ東京)式の表現に比べ、「政治的公平」(放送法)が原則のテレビ局としてはやや珍しい。
5日のニュースで国会前デモを取り上げた際には、「主催者側は『午後の特別委員会の開会に向け、さらに大勢の人たちに集まってほしい』と話しています」と締めくくられ、これにインターネット上の一部では「まるで参加を呼び掛けているようだ」と驚きの声が出た。
その国会前には、なおも多くの人々が集まり続ける。6日午後にはスーツ姿の山本太郎参院議員が登場、「また明日も『絶叫テロ』するつもりですかー?」と周囲に問いかけつつ、「やるに決まってるだろって!」と叫び喝采を浴びるなど、熱気はますます高まっているようだ。