猪瀬直樹東京都知事が公開した5000万円の「借用書」について、専門家からは、「印紙も実印もないのは不自然だ」との指摘が出ている。これだけで疑いを晴らすのは、難しそうな情勢だ。
A4サイズほどの紙1枚の「借用書」は、極めてシンプルな作りだった。貸した側の徳洲会の徳田毅衆院議員あてに、日付のほかに、自筆で金額、猪瀬直樹知事の住所と名前が書かれている。
5000万円の借入は、2万円の印紙を貼らなければならない
2013年11月26日の会見によると、猪瀬直樹知事は、出馬表明前日の12年11月20日に徳田議員から5000万円を受け取るとき、議員が用意した借用書にサインするよう求められた。無利子・無担保で返済期日も書かれていなかったが、一時的に借りてすぐに返すつもりでいたという。印鑑も押されておらず、印紙も貼られてなかったことについては、不慣れだったこともあり、信頼関係があればいいと思ったと釈明した。
5000万円は13年9月26日に特別秘書が返しに行き、借用書は後日に人を介して郵便で戻ってきたという。
こうした釈明については、ネット上では、厳しい声が相次いでいる。「そもそも債権者のサインがないとか証書じゃねえよw」「こんなペラ紙で5千万とか借りられるのがもう胡散臭い」といった声のほか、猪瀬知事が自分で勝手に作ったものではないかという憶測まで出た。
借用書に詳しい河原崎弘弁護士は、印紙がなくても効力はあるものの、印紙税法違反の疑いがあると指摘する。
5000万円の借入は、2万円の印紙を貼らなければならず、もしそうしなければ、印紙税法第20条の規定から、まず行政罰として3倍の過怠税を課されるというのだ。今回の場合は、6万円となる計算だ。事後にもし自主的に印紙税を納めるのなら、1.1倍、つまり2万2000円の過怠税を支払わなければならない。