ここ10年ほど足踏みが続いてきたカジノ解禁に向けた動きが、いよいよ本格化していた。カジノを含む統合型リゾート(IR)整備を目指す超党派の「国際観光産業振興議員連盟(IR議連、通称・カジノ議連)が、「推進法案」を臨時国会が会期末を迎える2013年12月6日までに提出することを決めたからだ。
議連の最高顧問のひとりは安倍晋三首相だ。安倍政権は長期政権になると見る向きも少なくないことから、法案が可決される可能性は高く、2020年の東京五輪を前に「お台場カジノ」が、いよいよ現実味を帯びてきた。
「推進法案」を14年の通常国会で成立させる
議連には社民、共産を除く与野党6党から180人以上が参加しており、議連会長の細田博之衆院議員(自民)は2013年11月12日の議連総会で「機は熟してきた」と気勢を上げた。今回提出する「推進法案」では、政府がカジノを設置する区域を指定し、建設や運営は民間が行うことを定める。事業者に免許を与える条件を厳しくして暴力団関係者の関与を防ぎ、本人確認を厳しくして未成年者やギャンブル中毒者が入場できないような対策も行う。この法案を14年の通常国会で成立させ、具体的な手続きを定めた「実施法案」に向けた作業に入る。スムーズに審議が進めば、2020年の東京五輪直前には「1号店」が開業する見通しだ。
議連メンバーの念頭にあるのがシンガポールでカジノがもたらした経済効果だ。シンガポールでは10年にカジノが2か所オープンした。そのひとつが、日本でもSMAPのCMで有名になったマリーナ・ベイ・サンズ。カジノ以外にもホテル、ホテル、国際会議場を備えた典型的なIRだ。
シンガポールを訪れた外国人は09年は970万人で観光収入は12.6億シンガポールドル(約1005億円)だった。これが、カジノ開業後の11年には1320万人、22.3億ドル(1778億円)に大幅に伸びている。カジノと周辺の施設が相乗効果をもたらした形で、目立った犯罪の増加も確認されていないことから「クリーンな都市型カジノの成功例」として知られている。
猪瀬知事「カジノがあれば消費も増え、税収も増える」
すでに日本国内では東京、大阪に加えて佐世保市のハウステンボス、沖縄などが、すでに誘致合戦を繰り広げている。猪瀬直樹知事も11月8日の会見で、
「カジノがあれば消費も増え、税収も増える」
と話し、歓迎姿勢だ。
シティバンクグループのシティリサーチが13年8月に発表した試算によると、東京、大阪、沖縄にカジノができた場合、134億~150億ドル(1兆3300億円~1兆4900億円)の収入がもたらされる。シンガポールを抜いてアジアではマカオに次いで2番目に大きい規模だ。ホテルやショッピングの売り上げも考慮すると、さらに経済効果は大きくなる。
猪瀬知事が言うように、地方自治体の税収増にもつながる。同じ試算では、東京都は3.4%、大阪府は9.0%、沖縄県は16.8%税収が増えると見込んでいる。
フジのほかサガサミー、コナミの3社取りざたされる
有力視されているのは、整備のしやすさや交通のアクセスの良さから、東京ではお台場、大阪では夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)、沖縄では宮城島(うるま市)。その中でも、東京五輪を背景に、「1号店」はお台場にオープンするとみる向きが多い。
シティリサーチの報告書の中で、カジノに関連する国内企業として名前が挙がっているのが、フジ・メディア・ホールディングス(HD)、セガサミーホールディングス(HD)、コナミの3社だ。セガサミーとコナミの2社はゲーム機に関連する会社なので、カジノの建設で売り上げが伸びるのは容易に想像できる。報告書では、フジ・メディアHDについては、
「カジノの運営に参画した場合、マスメディアの試算を活用して大規模な宣伝活動を行い、カジノの消費者の魅力を多いに高めることに貢献するだろう」
と指摘。フジテレビは近年、イベント事業にも力を入れているだけに、カジノのオープンでこの傾向が加速することになりそうだ。