水に炭酸ガスを加えた「炭酸水」に、女性たちから熱い視線が注がれている。ヨーロッパでは「ガス入りミネラルウォーター」として日常的に飲まれるが、日本ではウイスキーやリキュールを割るくらいであまり馴染みがない。
しかし最近では、すっきりした飲み口に加え、血行促進、便秘解消などさまざまな効果も期待できるとして人気が急上昇しているのだ。
炭酸が血管を広げ「血行促進」してくれる
価格も安く、コンビニやスーパーで簡単に手に入る炭酸水。その人気ぶりは、数年前からテレビや雑誌でも多数取り上げられ、2013年10月23日には「ZIP!」(日テレ系)でも紹介された。最近では好みの飲み口を選べるほど種類も増え、若い女性たちからラブコールが送られているという。
炭酸水がここまで注目される理由は、爽快な味わいだけでなく、健康や美容面での効果にある。炭酸水を飲むと血管が拡張され、胃や腸の「ぜん動運動」が盛んになり、冷え予防、食欲増進や便秘解消につながるというのだ。一体どういうことなのか。国際医療福祉大学の前田眞治教授に仕組みを解説してもらった。
「炭酸水を飲むと、血管内に二酸化炭素が入りこむ。炭酸は本来、エネルギーやタンパク質を作った後にできる老廃物なので、体は炭酸が入ってきた場所にこれらを作るための血液が必要だと誤認し、血管を広げてもっと酸素や栄養を送り込もうとする。その結果、血管が拡張し、たくさんの血液が流れ、血行が良くなるのです」(前田教授)
食欲増進や便秘解消のために飲む場合は少量でよく、冷たい炭酸水を100~150ml程度飲むのが適切だそうだ。逆に、たくさん飲むとダイエットにもつながる。「ダイエット目的なら、ぬるい炭酸水を500ml程度飲むといいでしょう。少量だと『ぜん動運動』が活発になるのですが、一定量を超えると胃が膨れてぜん動運動が鈍り、満腹感が得られるのです」(前田教授)。もちろん、炭酸飲料でも同様の効果が得られるが、ダイエットのために飲むならカロリーゼロのものを選ぶ必要がある。
各社も新商品投入 トクホ、レモン風味まで
炭酸水の使い道は、飲むだけではない。最近は「外」からの効果も注目され、ヘッドスパや洗顔などにも使用される例が増えている。ここでもポイントは炭酸の「血管拡張作用」だ。炭酸水に溶けた二酸化炭素は、皮膚表面から毛細血管のある真皮に浸透し、血管を拡張し、血行を促進する。血の巡りがよくなることで、新鮮な酸素やタンパク質などが行き渡り、美容効果が期待できるのだそうだ。また、皮膚に付着する気泡にはアカやゴミを取り去る性質もあるとされ、美容面からも評価されている。
こうしたブームは生産量にも顕著に現れている。全国清涼飲料工業会によると、08年は3万1400キロリットルだったが、12年には約3倍となる9万4600キロリットルとなり、過去最高を記録した。メーカー各社は相次いで炭酸水商品を投入している。たとえば、11年にはアサヒ飲料が「ウィルキンソン タンサン」(95円)、今年7月にはサントリーが「南アルプスの天然水 スパークリング」(100円)を発売した(いずれも500ml/税別)。
中には、健康志向の高い人に向けたトクホの炭酸水や、炭酸水が苦手な人でも飲みやすいレモンなどの香料を入れた炭酸水も。水道水から炭酸水を作る、ソーダメーカーもブームを後押ししている。