中国当局の「記者研修」は反日教育だった 報道の「対日強硬路線」さらに強まる

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   改善の兆しが見えない日中関係をさらに冷え込ませるようなニュースが入ってきた。中国共産党が、新聞やテレビの記者を対象に研修を実施し、反日を奨励するような指示を出したという。

   中国のメディアは「党の喉と舌」と呼ばれ、宣伝機関と位置づけられる。沖縄・尖閣諸島を巡る2国間の対立がいまだに解決の糸口が見つからないなか、中国発の報道は対日強硬路線が強まる見通しだ。

報道機関は現体制維持に寄与する宣伝が使命

   J-CASTニュースでは2013年10月15日、中国当局が記者25万人を対象に「マルクス主義報道観」など6種類の研修を実施すると報じた。実はその主要項目のひとつが「反日教育」だという。10月20日付の共同通信によると、研修の講師団は党宣伝部などが組織し、尖閣や歴史認識に絡む日本政府の姿勢と安倍政権の「右傾化」を厳しく非難する一方、領土問題で譲歩するような主張は禁じたという。中国の記者は免許制で、2014年1~2月に全国で更新試験が行われるが、研修は試験に関連しているとみられる。

   中国のメディアのあり方は、ジャーナリスト福島香織氏の著作「中国のマスゴミ」に詳しく書かれている。かつて毛沢東は、「新聞は党組織の一部分」「党の指導者がその宣伝方針を新聞に与える」と位置づけた。つまり「報道機関の仕事は、あくまでも現体制維持に寄与する形の宣伝が第一義の使命という点は建国以来変わらない」。胡錦濤体制の2003年以降、庶民の不満や権力の腐敗を暴く記事が許されるようになったが、それも「党中央批判、体制批判につながってはいけない」と枠がはめられている。報道機関は党中央宣伝部が管理し、毎日のように報道内容の掲載可否をチェックされ、指示を受ける。

   一方、近年は大衆受けする記事を載せるタブロイド紙、情報紙が増え、インターネットでも配信される時代となった。メディア間の読者獲得競争は激化するが、当局の監視下では題材選びにも制約がある。その状況にあって読者受けがよく、体制批判につながらない都合のよい話題が「反日」なのだ。日中間で外交問題が起きれば、「日系企業の批判ネタは捏造してでも書き続けること」や「針小を棒大にして扇情的に発信すること」もあるそうだ。

   もともと大衆メディアにとっては「おいしいネタ」、そこに当局から「反日奨励」のお触れが出たとあれば、むしろ好都合とばかりに日本たたきが加速するだろうか。

安倍首相の靖国参拝見送りにさっそくかみつく

   中国のメディアのなかでも党「直系」の機関紙、人民日報がさっそく、安倍晋三首相にかみついた。首相は、秋季例大祭中の靖国神社の参拝を見送り、「真榊(まさかき)」を奉納するにとどめた。人民日報電子版(日本語)は10月18日付の記事でこれを「間接的亡霊参拝」と表現、「供物奉納と自ら参拝することとは完全に性質が同じ」と切り捨てた。

   批判の矛先は、日本のメディアにも向いた。「首相の靖国参拝見送り」を報じた共同通信が、中国メディアの動向を伝えつつ「全くわけのわからないことに『中国は冷静な反応』などという結論を導き出した」と憤る。冷静な反応などあり得ない、日本に侵略された痛ましい歴史を忘れるというのは裏切りなのだと激した後、過去2年間「日本の誤った歴史観を正す」ために報じてきた記事の見出しを列挙した。

   人民日報の指摘に該当しそうな共同通信の配信記事を見ると、確かに中国メディアの報道ぶりを伝えているが、探した限り「冷静な反応」という明らかな記述は見当たらなかった。

   今回の自国メディアの締め付けから、中国側は日本への態度を緩める気は毛頭ないとのサインとも受け取れる。前中国大使の丹羽宇一郎氏は、10月2日付の日本経済新聞電子版のインタビューに「中国の反日はまだ5年は続く」とこたえた。反日が高まるのは、中国の権力基盤が弱まって国内政治が不安定になった時期で、政権が求心力を維持するために起きるのだという。2012年9月に中国各地で反日デモの嵐が吹き荒れ、その後両国関係は冷え込み、今に至るまで日中首脳会談は行われていない。この間中国では、指導者が胡錦濤氏から習近平氏に交代し、体制の移行期には派閥争いも伝えられた。

   習体制が基盤を固めるまでは4~5年、国内を抑えるうえで軍の支持を重視し、政治も軍寄りになるというのが丹羽氏の見立てだ。当面は「党の舌」である中国メディアが、日本に激しい言葉を浴びせかけてくるのは間違いない。

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