サッカー日本代表の本田圭佑選手が、「レーシック手術失敗」のうわさを自ら否定した。ビジネス誌上で執刀医と対談し、術後から1年経過した今も左右の視力は1.5を保っているという。
所属チームや代表戦での個人成績を見ると、手術後にパフォーマンスが落ちた事実を示す数字は出てこない。サッカージャーナリストも、目の影響によりプレーに支障が出たとは考えられないと断言する。
ネガティブな報道「僕も知っていた」
ことの発端は、本田選手をクローズアップした2013年3月25日放送のNHKの番組だ。その表情から「目の様子がおかしい」と、インターネット上で話題になった。2012年6月にレーシック手術をしたと報じられており、術後に影響が出たのではないかと心配する声が上がった。週刊文春は2013年4月11号、6月20日号の2回にわたり、「手術失敗疑惑」を取り上げている。
こうした疑念を払しょくするためか、本田選手は2013年10月3日付「ダイヤモンドオンライン」で、手術の執刀医と対談、自ら術後の目について語ったのだ。
手術前はボールがぼやけていたが、レーシックの効果はすぐに結果につながったと説明する。ゴール数だけでなく得意のボレーシュートの数にも出た。術後ドライアイがあったので点眼していたが、その頻度は今では減ったという。執刀医は、「一般的には半年~1年くらいで元の状態に戻るケースが多い」と補足し、そろそろ回復時期にきていると話した。
手術を受けたことに「ネガティブな報道が多かったが」と問われると、「僕も知っていた」としつつも「まあ、この結果を見てもらって、僕自身何の後悔もないですから」とキッパリ。「むしろ助けられている部分が多い」「もちろん、満足しています」と続け、スポーツ選手に勧めたいと強調した。
うわさでも放置しておかず、自らの状態を語ろうとする姿勢は本田選手らしいかもしれない。確かに術後の成績を見ても、悪影響が出たとは思えないのだ。
2012年6月20日付の日刊スポーツによると、手術は6月12日にアウェーで行われた2014年ブラジルワールドカップ(W杯)アジア最終予選、豪州戦から帰国した後だったそうだ。以後、同年に行われた代表戦では、W杯最終予選のイラク戦(9月11日)とオマーン戦(11月14日)に出場して勝利に貢献している。親善試合も含めて2012年後半はほぼ「皆勤賞」だ。所属するロシア1部、CSKAモスクワでも好調をキープした。
目がよく見えるようになって精神的に落ち着いた
2013年に入ると、2月に左足首の故障が見つかって3月26日のW杯最終予選、ヨルダン戦を欠場した。しかしけがから復帰すると、6月4日の豪州戦では試合終了間際の後半ロスタイム、自らゴール「ど真ん中」にPKを蹴り込んでチームをW杯出場に導いたのは記憶に新しい。6月にブラジルで行われたコンフェデレーションズ杯の3試合、8月のウルグアイとの親善試合など、その後も代表メンバーの柱としてのプレーはチームの信頼を集めている。
CSKAでもリーグ優勝やロシア杯優勝に貢献、夏にはイタリア1部セリエAの名門ACミランが獲得に乗り出し、期限ギリギリまで交渉が続けられた。裏返せば、術後にパフォーマンスが落ちていたなら強豪クラブがそこまで本田選手を欲しがるわけがないだろう。
「フットボールレフェリージャーナル」を運営するサッカージャーナリストの石井紘人氏は、取材で本田選手のプレーを何度もスタジアムで見ている。J-CASTニュースの取材に「レーシック手術の影響は、全く感じませんでした。『失敗』は単なるうわさでしょう」と明言した。活躍が続いているのは足のけがが治って体調面で不安が取り除かれたのも事実だが、「目がよく見えるようになって、精神的に落ち着いたのも大きいかもしれません」。
確かに本田選手はインタビューで「サッカーでぼやけるのが一番つらかった」「ストレスを感じていた」と、視力が悪かった当時を振り返っている。懸念材料が解消されて、来年のブラジルW杯まで好調が維持されれば、代表チームにとってこれほど心強いことはない。