JR横浜線鴨居―中山駅間の川和踏切(横浜市緑区)で、線路でうずくまっていた高齢男性を助けようとした会社員の村田奈津恵さん(40)が死亡する事故が2013年10月1日11時30分ごろに起きた。
自分の命を顧みず、父親の制止を振り切っても救助に向かった勇気ある行動を称賛し、「自分ならできただろうか」とインターネット上で反響が広がっている。
「電車が来るまで7秒くらいだった」父振り返る
事故が起きる直前、奈津恵さんは父親の恵弘さん(67)が運転する車の助手席に乗っていた。信号が鳴り始めたので踏切前で電車が通過するのを待っていたが、前方から高齢男性が歩いてきて踏切の中に入った。男性は鴨居駅側に少し歩いていくと線路の上でうずくまったという。それに気付いた奈津恵さんはとっさに「助けなきゃ」と叫び、恵弘さんが「電車が近づいているからだめだ」と止めるも聞かずに飛び出した。男性を抱き起こそうとしたが間に合わず、電車にひかれ命を落とした。
事故現場の近くには商店街もあり、目撃者も多数いたそうだ。ある男性は非常ボタンを押し、電車もブレーキをかけ大きな音を上げていたが、奈津恵さんを守ることはできなかった。なお、高齢男性は鎖骨を骨折するなど重傷だが命に別条はないという。
恵弘さんは1日夜、「とくダネ」(フジテレビ系)の取材に応じ、「だめだと言ったのですがあっという間に行っちゃって。電車が来るまで7秒くらいだったかな」と悲しみの色を浮かべながら事故を振り返る。奈津恵さんは優しい性格で、酔って寝ている人を介抱することも珍しくなかったという。恵弘さんは「おじいさんが大したことがなかったのがせめてもの救い」と語った。