「エスカレーターで女性のスカート内を」「靴の中にカメラ隠し」「無音カメラアプリで」…
こんな盗撮逮捕の報道が後をたたない。容疑者は実名で報じられるケースも多く、社会的影響はかなりのものだ。
それにもかかわらず、地位を確立した人の盗撮が報じられるのも珍しくない。大きなリスクを冒してまで、盗撮に走ってしまう理由は何なのだろうか。
盗撮きっかけに社外取締役、総務省諮問機関の会長も辞任
2013年9月26日、東京・千代田区のビルのエスカレーターで、20代の女性のスカート内をスマートフォンのカメラで盗撮したとして、30代の男が現行犯逮捕された。男は金融庁に出向中の財務省のキャリア職員で、容疑を認めて送検後に釈放されている。金融庁は「事実関係を確認した上、厳正に対処したい」とコメントしている。
12年8月には、約10年間日本IBMの社長を務めた大歳卓麻氏が、iPodの動画撮影機能で女性のスカート内を盗撮したとして警視庁から事情聴取された後、書類送検された。大歳氏は同社の最高顧問を辞任したほか、大企業5社の社外取締役、総務省の諮問機関である情報通信審議会の会長も辞任した。
古くは元タレントの田代まさしさんが、00年9月に盗撮しようとしている姿を通報され、書類送検された。当時田代さんは多数のバラエティー番組やCMに出演していたが、この影響で同年12月から01年7月頃まで芸能活動を休止している。
ストレスによる脳へのダメージが盗撮の引き金に
盗撮が増えた背景には、スマホやデジカメなど、小型で高性能な撮影機材が手軽に入手できるようになったことも影響していると見られるが、盗撮行為が発覚すると、それまで積み重ねてきた地位や名誉が全て水の泡になってしまう。
そういった報道を目にする機会はあったはずなのに、それでも盗撮をしてしまうのはどういう心理状態なのか。わいせつ行為の改善相談も行っている「カウンセリングオフィスAXIA」代表の衣川竜也さんに話を聞いた。
男性は小学校低学年から性欲が芽生え、高校までに一気にピークに駆け上がる。性への興味関心は高まっているのに、簡単に性的な接触を持てる環境になく、想像を膨らませるだけの時期がある。その時期の性的な興味が女性の体や性器ではなく、下着に向いたりすると、それが「性的嗜好」となる。男性は大なり小なりそうした嗜好を持っているが、強いストレスを受けてそれが爆発してしまうことがあるという。
人間の脳は、呼吸や循環、消化など、基本的な生命機能をつかさどる「脳幹」、感情や性欲を含めた欲求などをつかさどる「大脳辺縁系」、理性的な思考や感情のコントロールなど、「人間的な活動」を行う「大脳皮質」の3層構造からなる。
人間がストレスを感じると脳がダメージを受けるが、最も外側にある大脳皮質がダメージを受けやすい。むしろ、生命にかかわる活動をしている脳幹と大脳辺縁系の働きは活性化するという。
本能的な部分は活発になり、通常それを制御する部分の活動は落ち込むと、突発的な行動を起こしてしまいかねない。盗撮をしてしまう人は、そういう状態に陥っている場合が多いそうだ。
確かに田代さんも、08年に雑誌「サイゾー」のインタビューで、盗撮について「仕事が忙しくてストレスが溜まっていたのが一つの原因。あと、盗撮物のAVを見て、『自分でも出来るのでは?』と思ってしまって。本当に突発的な衝動でした」と語っている。