みずほ銀行が、ベネッセホールディングスの子会社で有料老人ホーム国内最大手の「ベネッセスタイルケア」(東京都渋谷区、以下ベネッセ)と業務提携することになった。自宅はあるが手持ちのお金が少ない老人ホーム入居希望者に、「リバースモーゲージ」と呼ばれる、自宅を担保にお金を借りる商品を利用してもらうことで連携する、というものだ。
今後の伸びが見込まれる老人ホーム需要をテコに、リバースモーゲージの普及を図ろうという試みで、動向が注目されている。
自宅を手放さずに有料ホームに移る
両社の提携開始は2013年10月1日。ベネッセは、自社の老人ホーム施設を利用または利用を検討している顧客が、自宅など保有不動産の活用による資金調達を希望した場合、みずほ銀のリバースモーゲージの資料などを提供する。みずほ銀は自社の顧客に老人ホーム入居希望者がいれば、ベネッセを紹介する。
顧客の特典としては、(1)ベネッセを通じてみずほのリバースモーゲージを契約した場合、借入金利を一定程度引き下げる、(2)みずほ銀を通じてベネッセの老人ホームに入居契約する際、体験利用料金を無料とする――がある。
高齢者が老人ホームに入る際、覚悟を決めて自宅を手放し、「死ぬまで入りっぱなし」もありえるが、老人ホームに入居しながら定期的に自宅に戻ることを望むケースが多い。リバースモーゲージなら自宅を担保にお金を借りるため、死ぬまで自宅を売却しないで済むことがメリットだ。高齢社会の進展とともに老人ホーム需要が高まるのが確実な中、高齢者のニーズを上手くすくい上げた提携と見られている。
リバースモーゲージは米国などでは盛んだが、持ち家などの資産を子供に残す傾向が強い日本では30年余り前に導入されたものの、これまで低調だった。バブル崩壊後、担保となる土地の価格が下落基調にあったことも普及に水を差した要因だ。
他のメガバンクも関心持つ
自宅の土地などを担保に金融機関などからお金を借り、死亡時にその担保の売却資金で返済するのがリバースモーゲージ。死ぬまで自宅を使い続けることが利用者のメリットだが、不動産価格の下落は担保価値の下落に直結する。長命化も貸す方にとっては管理コストの増加につながる。
1981年に民間金融機関を含めて日本で初めて導入した東京都武蔵野市は地価下落などで貸し出し資金を回収できないケースが続出し、近く制度を廃止する方向となっている。金融機関も及び腰で、扱っているのは三井住友信託銀行やりそな銀行などに限られる。
ただ、アベノミクスで資産価値は上昇傾向にあり、東名阪の3大都市圏に限れば、地価が今の水準から大きく下がらない可能性もある。このため、みずほ銀は今年7月下旬、メガバンクとして初めてリバースモーゲージに参入した。
資産を残そうという考え方も長命化とともに変化し「資産を自分の老後のために使いたい」という人の割合が増えているという調査もある。このため、他のメガバンクなどは、みずほ銀とベネッセの提携の行方に高い関心を持っている。