「対馬は、はるか古代から韓国の領土」
「我が韓国と北朝鮮が力を合わせれば、必ず対馬を『取り戻せる』はず……」
そんな荒唐無稽な内容の小説が、いま韓国でベストセラーになっている。
タイトルからして凄い。『千年恨 対馬島』だ。朴槿恵大統領は「韓国が被害者という立場は千年不変」と演説していたが、対馬もこの「千年恨」のターゲットらしい。「朝鮮半島の『左足』である対馬を取り戻せ」と主張、その「奪回」作戦を描く。
金正恩と朴槿恵がタッグ、なすすべない安倍首相…
物語の主人公は、在日コリアンの自衛隊員キム・ソンジンだ。帰化して日本人「松野左近」を名乗るが、隊内では露骨な昇進差別を受けていた。しかし父の自殺をきっかけに鬱憤が爆発、同僚たちの前で放尿して停職処分にされ、「対馬奪回部隊」を名乗る韓国軍人たちにスカウトされる。
キムたちは「日本に奪われた」対馬を取り戻すべく、朴槿恵大統領の密命による「第4次対馬征伐」作戦を進行する。観光客に偽装した特殊部隊2000人を送り込み、対馬を乗っ取るというものだ。北朝鮮も同じ民族としてこれを手助けし、美女スパイが「くのいち」ばりに自衛隊幹部を肉体で篭絡、防衛情報をかっさらう。
しかし日本も黙ってはいない。狭まる包囲網。迫る敵の手。しかし韓国側には切り札があった。金正恩第1書記によるノドンミサイル発射だ。2014年、安倍晋三首相はやむなく対馬を手放す。朴大統領は力強く演説する。
「この対馬奪回により、大韓民国が二度と他国に屈しないということを、私は全世界に宣言します!」
「1000年侵略を続けてきた『悪魔』日本」
北朝鮮との共闘、日本への大勝利と、まさに韓国側の願望があふれ出た「ファンタジー」作品だ。北朝鮮女スパイの「セックストレーニング」シーンも綿密に描かれるなど、読者サービスにも余念がない。しかし4月の発売以来、出版社はその「リアルさ」を強調、
「日本に送る力強い警告のメッセージ! 見よ、1000年のあいだ韓民族を侵略し続けてきた(※日本による対馬『占領』を指す)『悪魔の正体』を!」
「この本を読めば、あなたも日本の蛮行に怒り対馬返還を要求したくなるでしょう!」
などと煽りたて、新聞などでも多く取り上げられる話題作になった。「全国民」を対象とした読書感想文コンテストも現在開催中だ。
対馬は江戸時代まで日本に無視されていた?
作者のイ・ウェンホ氏も東亜日報のインタビューで、
「対馬は元々韓国領で、日本は江戸時代までほとんど『無視』していたが、維新後の混乱に乗じて日本領に編入したのだ」
「古地図などでも対馬は韓国領と記載されており、李承晩元大統領も第2次大戦後繰り返し対馬返還を要求している」
「私の小説を通じて、対馬についての正しい歴史を知ってもらいたい」
と怪気炎を上げる。読者からは「この作品はフィクションだが、ぜひ現実になってほしい」と熱烈な感想が続々と寄せられているという。
対馬は「古事記」の国産み神話にも登場するなど、古くから日本の一部として認識されてきた。しかし韓国では近年「対馬は韓国のモノ」と称する主張が繰り返し浮上中だ。竹島問題で日本を牽制する目的があるとされ、韓国南部の馬山市(現・昌原市)が2005年に「対馬の日」条例を成立させたほか、国会の場にも議論が持ち出されている。