すしネタでお馴染みの北太平洋のクロマグロの漁獲規制が事実上、決まった。この海域の資源管理を議論する国際機関「中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)」小委員会が2013年9月5日、福岡市で開いた会合で、乱獲が指摘される未成魚(3歳以下)の2014年の漁獲量を、2002~2004年の平均より15%以上削減する新ルール案を採択したのだ。
正式には12月にオーストラリアで開かれるWCPFC年次会合で承認するが、小委案通りに決まるのは確実だ。日本の漁獲実績はすでに下がっており、消費者への影響はほとんどないと見られている。
もはや「採り放題」は通用しない
マグロの資源管理は、WCPFCや大西洋マグロ保存国際委員会(ICCAT)など海域により国際機関(国際漁業管理機関)が5つ設けられ、それぞれクロ、キハダ、メバチなどの漁獲ルールを定めている。漁獲規制が厳しくなったのは2000年代から。もちろん、乱獲が原因で、1990年代後半から2000年代にかけて世界のマグロ漁獲量は年間200万トン前後と、1980年代の2倍の水準に膨らんだ。
このため、科学者や環境保護団体の指摘を受けて規制の流れが強まり、例えばICCATの場合は東大西洋でのクロマグロ漁獲枠を2006年の3万2000トンから2011~12年には1万2900トンと3分の1近くに減らした結果、資源量は回復に向かっているという。
WCPFCは総漁獲可能量の数値を設定していないなど、他の海域より規制が緩く、今回の規制も甘さが指摘されている。それでも資源管理の大きな流れの中で、もはや「採り放題」が通用しないことは間違いなく、「この海域でも今後、より強い規制の議論が進む可能性は強い」(水産庁筋)。
「完全養殖」の研究進む
日本は世界のマグロ類の約3割、クロマグロの約8割を消費するマグロ消費大国。特に日本のクロマグロ漁の9割は太平洋産で、なかでも、未成魚の乱獲が大問題だ。主流の巻き網漁は、幼魚から成魚まで文字通り一網打尽にしてしまうので、漁獲量の99%近くを3歳以下が占める。このため、今後は巻き網漁の規制強化は避けられない。
未成魚乱獲の背景には養殖拡大もある。養殖といっても、捕獲した若い魚を育てる「蓄養」が主流で、2012年の養殖クロマグロの国内出荷量は10年前の約3倍に増えており、それだけ天然の未成魚が取られているわけだ。水産庁は昨年、毛針を使って養殖に使う未成魚の「ヨコワ」の漁獲を伴う養殖の拡大を禁止、来年にはヨコワを取る引き縄漁業者に承認制を導入し、漁船数の増加を防ぐ考えだ。
今後は、産卵させ、ふ化させて育てる「完全養殖」の普及が必要になる。2002年に近畿大学が完全養殖を実現して養殖用の稚魚を出荷しているほか、三菱商事系の水産会社が完全養殖で量産したクロマグロの出荷を近く始めるなどしている。ただ、産卵数や稚魚の生存率は海水温など環境に大きく左右されるなど、技術は発展途上だ。
今回の規制で日本の未成魚の漁獲量は年間約6800トンが上限になる。ただし、日本の漁獲量は2002~04年当時に比べると下がり、2010~12年の漁獲実績は平均して年約6100トンにとどまることから、消費者への大きな影響はないとの見方が多い。それでも、やはり規制が強まるウナギなどと同様、限られた資源の浪費を避けるためには、消費者も大量消費を戒める必要がある。