「福祉国家」として知られてきたオランダが、ついにその看板を下ろすことになった。ウィレム・アレクサンダー国王が2013年9月17日(現地時間)に行った演説で、「20世紀型の福祉国家は終わった」と述べ、自助努力を求める社会のあり方を提唱したのだ。
「小さな政府」への恒久的な移行を意味する
日本では北欧諸国が「福祉国家」の代表として知られているが、実はオランダも「大陸型福祉国家」という呼び名で知られている。国連開発計画(UNEP)や経済協力開発機構(OECD)の統計によると、2012年のオランダのGDPに占める福祉支出(教育関係をのぞく)の割合は24.3%で、デンマーク、スウェーデン、フランス、ドイツ、ベルギー、スイス、オーストリア、フィンランドの次に高い。日本は16.9%だ。
国王の演説は、マーク・ルッテ首相の内閣が作成しており、施政方針演説に近い性質を持つ。現地メディアの報道によると、演説では、
「グローバリゼーションや高齢化社会といった社会的発展で、労働市場や公共サービスは、もはや時代の要請に合わないようになってしまった」
と社会状況の変化について説いた上で、
「古典的な福祉国家は、ゆっくりと、しかし間違いなく、『参加社会』に進化しつつある」
と、今の「福祉国家」という考え方が行き詰まっていることを明言した。また、「参加社会」という言葉は、「市民が自分の面倒を見て、退職者の福祉といった社会問題に対する市民社会の解決策を作り出す社会」だと説明された。
英フィナンシャル・タイムズは、この演説を
「国王の演説は、緊縮策が一時的な引き締めではなく、『小さな政府』への恒久的な移行だということを示した。1960年代~70年代にかけて築いてきた平等主義的な社会モデルから距離を置いてきた、ここ10年ほどの(オランダ政府の)動向を盛り込んだ形だ」
と分析。現状追認型の演説だったとの見方を示した。