韓国による水産物禁輸に対し、日本側が世界貿易機関(WTO)への提訴も辞さない方針を示していることに、韓国が「逆ギレ」している。
韓国は2013年9月9日以降、東電福島第1原発での汚染水漏れを理由に、東北・関東8県の水産物輸入を全面禁止中だ。対して日本側は「科学的な根拠に乏しい、非常に過剰なもの」として、禁輸の即時撤回を求めている。
そもそもは韓国政府も「お墨付き」与えてきた
そもそも日本産水産物に対して韓国政府は当初その安全性を強調、市民や野党議員などの禁輸要求を一蹴し続けてきた。しかし汚染水問題が大きく報じられる中で、政府の呼びかけにも関わらず国内ではパニックが増大、不安感から韓国産水産物にまで影響が出始め、特に日本海産の魚は売り上げが半減する大打撃を受けた。「ソウルの築地」鷺梁津水産市場からは人が消え業者からも悲鳴、結局世論に押される形で、福島など8県の輸入禁止を決めた――という経緯がある。
しかし日本ではこれまで、1キロ当たり100ベクレルという放射線量の基準値を守って輸出を続けており、その「安全」には上記のとおり韓国政府もお墨付きを与えてきた。それが今回のような形で覆されては、国際的な風評被害拡大にもつながりかねない。
日本政府は16日、農林水産省の幹部を韓国に派遣、韓国側の措置を「非科学的」と指摘し、早期の解除を求めた。また林芳正農水相も17日の会見で、「科学的根拠に基づいてですね、冷静に対応してもらいたい」とするとともに、一部紙が先行して伝えた「WTO提訴」についても、現時点では未定としつつ「絶対に提訴しないということではない」と含みを持たせる。
韓国議員「むしろ日本に損害賠償を」
日本側が「異例」(朝鮮日報)の強硬姿勢に出たことに、韓国側は反発を強める。各紙には、
「『放射能日本』の逆ギレ」(韓国・ファイナンシャルニュース)
「原発事故へのデタラメ対応で周辺国に放射能への恐怖を与えた日本に、WTO提訴の資格があるのだろうか」(同京郷新聞)
といった攻撃的な言葉が踊り、複数のメディアが日本の反応を「逆ギレ(盗人猛々しい)」と形容した。
また政界でも、野党を中心に激しい日本非難が相次いだ。民主党幹部の趙慶泰議員が16日、
「日本のせいでいまや我が国の市場はパニック状態だ。だというのにWTOに提訴などと抗議するというのは、韓国の主権を無視する挑発であり、横暴だ」
と主張したほか、正義党の沈相ジョン議員も、日本がこうした態度に出るようなら「日本すべての水産物や食品も輸入禁止にすると警告すべき」と強硬論をぶった。民主党の金承南議員に至っては、一連の水産物パニックで生じた損害も含め、日本に「賠償」を求める必要があるとほえる。韓国ネットでも、こうした賠償論が大真面目に語られるほか、
「(協議に来た)日本の役人なんか袋叩きにしてしまえ」
といった暴論まで書き込まれる始末だ。
日本政府では引き続き、水産物の安全管理対策の徹底などを説明することで韓国側に理解を求めるという。