価格が安く、好調な大手スーパーなどのプライベートブランド(PB)商品を背景に、韓国産ビールの輸入が急増している。
「ビール」といえば、アイルランドやドイツが原産国として有名だし、これまでは米国産が多く輸入されていた。韓国産ビールは「水っぽく味が薄い」「泡が立たない」とされ、敬遠されがちだったが、じわじわと拡大。国内スーパーなど量販店の陳列棚をにぎわしているようだ。
人気のベルギービールをしのぐ勢い
東京税関調査部によると、ビール系飲料の輸入は、数量で6年連続、金額で8年連続増えていて、2013年(1~7月)も好調に推移している。近年、アルコール飲料の消費が減少しているが、国税庁がまとめた酒類販売(消費)数量をみると、「縮小傾向の市場の中で、ビール系飲料の輸入は別」という。
主な原産国は韓国とタイ、ベルギーで、この3か国で約9割のシェア(2012年、数量ベース)を占めており、10年前(2002年)と比較すると輸入量は約3倍に増えた。
なかでも、韓国の躍進は目覚ましい。数量ベースでみると、韓国は2002年には13446キロリットルの2位だったが、2012年は18万5818キロリットルと約14倍伸ばし、首位に立った。シェアも02年の17.0%から、71.9%(第1位)という圧倒的なシェアを占めるようになった。
また、金額ベースでも02年には10億7000万円で2位だったが、12年は140億1000万円と約13倍伸ばし、シェアも12.1%から64.5%と圧倒した。
数量ベースでは、タイが02年の13位から2位に、ベルギーが8位から3位に上昇。金額ベースでは、ベルギーが7位から2位に、タイが12位から3位へと、順位を大きく上げている。
原料や醸造法によってさまざまな色や風味、味をもつといわれ、最近話題の「ベルギービール」の輸入量も、この10年間で約3倍に増えたが、韓国産ビールはそれをもしのぐ勢いがあるというわけだ。
東京税関調査部は、「韓国やタイ、ベトナムなどの国は、国内の大手スーパーのPB商品を受託生産していることが大幅な数量増加に結びついているようです」と話している。
イオンのPBビールは累計販売本数で5億本を突破
国内で販売されている韓国産ビールは、「Cass」ブランドなどの「OBビール」と、「HITE」ブランドなどの「HITEjinro」(ハイトジンロ)の2大ビール会社が生産。「88円」の破格で売り出している、流通大手のイオンのPBビール「トップバリュ バーリアル」や、ダイエーが販売する「バーゲンブロー ノイヴェルト」、川商フーズの「プライムドラフト」(いずれも、350ミリリットル缶、第3のビール)などがそれだ。
このうち、イオンの「バーリアル」は2010年6月発売以来の累計販売本数が5億缶(350ml缶換算)を突破。2013年7月にはホップの配合を変更することで、従来品と比べて泡がしっかりと立ち、長持ちするようにリニューアルするなど、より日本人好みのビールを目指している。
一方、これまで輸入ビールの代名詞のような存在だった「ミラー」や「バドワイザー」の米国産、「ハイネケン」や「グロールシュ」のオランダは大きく順位を落としている。
東京税関によると、数量ベースでは2002年にシェア25.9%で1位だった米国が11位に、同3位だったオランダも10位に大きく後退。金額ベースでも米国は1位から7位に、オランダは5位から12位に後退した。
ただ、米国産やオランダ産の有名銘柄は、国内メーカーがライセンス生産していることもある。
単価ベースをみると、2012年は伝統的なビール醸造国であるアイルランド産やドイツ産の単価が上昇。「より付加価値の高い商品の輸入が増えている」という。半面、数量シェアを大きく伸ばした韓国やタイの単価は下落しており、「大量生産によるコスト削減の効果が現れている」と指摘する。