2ちゃんねるに書き込まれ「第2の電車男か」と話題になった「ゲーセンで出会った不思議な子の話」が、エンターブレインで書籍化されることになった。
ところが、出版記念のインタビュー記事で、著者がスレッドに書いた内容はフィクションだったと明かし、実話と思ってこの話をネットで読んだ人からは「感動した俺の気持ちを返せ」などの批判が相次いでいる。
まとめサイトで拡散して人気に
「ゲーセンで出会った不思議な子の話」は、2012年1月15日から18日まで、2ちゃんねるのVIP+板に書き込まれた。スレッドを建てた著者による告白形式で、他のユーザーと交流しながら話が進行した。2ちゃんねるから出てブームとなった「電車男」と同様に、ユーザー同士で感想を共有しながら、話の展開を見守るという形だった。
サンドウィッチマン富澤たけしさん似の主人公の大学生が、ゲームセンターで吹石一恵さん似の美大生の女性と出会う。共通の趣味である格闘ゲームを通じて交流を深め、女性の「不思議」な性格に魅了されていく。ところがある日、女性から余命1年の「若年性卵巣がん」であると告げられる。残された時間を2人で懸命に過ごすが、最後に女性は亡くなってしまうというストーリーだ。
このスレッドが2ちゃんねるのまとめサイトに掲載されると、一気にツイッターなどで広がった。「こんなに感動した文章は初めて」「感動した。切なすぎる」「涙が止まらない」などの感想がつぶやかれ、あるまとめサイトの「不思議な子の話」の記事は、2013年9月11日時点で約7万4000回ツイートされている。
しかし、この「感動」を呼んだ話がフィクションだったことが明かされた。加筆修正して小説として出版するにあたり、著者の富澤南さんが2013年9月10日に掲載された「ファミ通.COM」のインタビュー記事で、
「出発点は、ゲーセンにこんな子がいたらいいなという私の妄想です。『こんな女の子がゲーセンに通っていたら、どんな物語が紡ぎだされるんだろう』と考えていくうちに、スレッドに書き込んでいました」
といい、元は妄想だったと発言したのだ。
また、フィクションと明示せずにスレッドに書いたことについて、「あえてカミングアウトする必要もないとは思うんです。実話なのか創作なのか、どう思おうと読者の自由なわけですし、そもそも無粋な感じ」と語った。