韓国系団体が米国で推進中の「慰安婦の碑」建造運動が、ここに来て行き詰まりを見せている。日本政府による反論活動や、韓国人同士の「内輪もめ」などが主な原因だ。
「慰安婦の碑」は2010年にニュージャージー州パリセイズパークに米国で初めて建てられ、2013年7月30日にはカリフォルニア州グレンデールに4つめの碑が誕生した。
米国市議「日本はすでに謝罪している。慰安婦碑はいらない」
さらにニューヨーク、ロサンゼルス周辺などに続々計画が持ち上がり、米州韓人会総連合会のイ・ジョンスン会長も、韓国・女性新聞に2013年8月29日掲載されたインタビューで、
「全米の大都市すべてに慰安婦碑を建てる。在米韓国人250万人同胞が力を合わせればできないことはない」
と話すなど、日本には「ピンチ」かに見えた。
ところが13年9月初めごろから、韓国メディアの論調が急に弱気になり始めた。各地で進行中だった建造計画が、相次いで挫折したためだ。
カリフォルニア州ブエナビスタやミシガン州サウスフィールドなどで、慰安婦碑・像の建造計画がそれぞれ撤回された。ニュージャージー州フォートリーでも建造直前まで来て計画が中断状態に陥り、またニューヨークで通りに「慰安婦ストリート」と命名する案も事実上頓挫しているという。
特にロサンゼルス近郊にあるカリフォルニア州ブエナパークの動向は、多くの韓国メディアの注目を集めている。慰安婦碑建造が発案された当初、地元議会は好意的な反応を見せていたのだが、8月27日にアーサー・ブラウン市議が、
「日本はアジア女性基金などを通じて元慰安婦女性に補償を行っており、当時の村山富市首相もお詫びしている。碑の建造は日韓関係に悪影響を及ぼすし、公共の場所に建てられる碑は地域と住民に関係するものでなくてはならない」
と声明を出すなど、反対ムードが強まり始めたためだ。現在推進団体が議員たちに改めて韓国側の主張を伝える文書を配布しているというが、反応は芳しくないという。
日本側の「説得工作」功を奏したか
情勢が変化したのはなぜか。韓国メディアはいくつかの理由を指摘するが、その1つが日本によるロビー活動、韓国側からすれば「妨害活動」の成果だ。たとえばブエナパークの場合、日本の在ロサンゼルス総領事館が市議全員に日本政府の立場を伝える手紙を送るなど、強力な働きかけを行ったと伝えられている。
また日本国内から大量に届く「設置反対」のメールも、自治体などへの圧力になっているという。日本では一部のウェブサイトが英文での文例や送信先などを公開し、地元議員や関係者に慰安婦反対の陳情を行うよう呼びかけており、こうした動きを韓国メディアでは「メールテロ」と解説する。なお、産経新聞では「気高き戦い」とこの運動を紹介している。
このほかサウスフィールドでも、日本側のロビー活動が慰安婦像設置を断念させたとされている。当初「善意」で建造を受け入れた自治体などには、上記のような日本側からの反対の声に初めて、これがデリケートな問題だと気づくところも少なくないようだ。
寄付金集めたけれど…暗礁に乗り上げたNY
ニューヨークでも、計画が暗礁に乗り上げた。世界的大都市に慰安婦碑を――そんな呼びかけで5000ドルの寄付を集め、韓国内で一時は大きな注目を集めたものの、碑を作るためには複雑な手続きと10万ドルの管理費がいることがわかり、結局にっちもさっちもいかない状態に。「慰安婦ストリート」案も、国際問題に発展することを危惧する市議会の協力が得られず、こちらも事実上失敗に終わっている。
韓国側の「自滅」もある。上記フォートリーでは市議会で建造案が承認されるなど、一時は順調に話が進んでいた。ところが文言や碑のデザインをめぐり、日本への非難を表に出すか出さないかで韓国人グループ同士の間に対立が生じ、半年近くも計画が宙に浮いたままだ。対立は感情的な主導権争いにも発展し、韓国・ニューシースでは「計画は白紙化の公算が高い」と報じている。