日本マクドナルドホールディングス(HD)の原田泳幸会長兼社長(64)が2013年8月27日、傘下の事業会社、日本マクドナルドの社長を退任した。後任にはカナダ法人出身のサラ・カサノバ氏(48)が就いた。
「100円マック」などで経営の立て直しに成功した原田氏だが、最近は販売が低迷するなどワンマン体制にも限界が指摘されていた。突然の交代劇の背景には何があるのか。
直近の売り上げを回復するための人材を投入
「日本のマーケットはダウントレンドで厳しい。直近の売り上げを回復するための人材を投入するのにベストなタイミングだと考えた」。原田氏は東京都内での記者会見で、社長交代に主体的に踏み切ったことを強調した。原田氏は持ち株会社の会長兼社長にはとどまる。
後任のカサノバ氏はカナダやロシア、日本、東南アジアで勤務し、直近までマレーシアとシンガポールの地域責任者を務めていた。会見では「6カ国のマクドナルドで経営に携わった経験を生かし、日本法人のさらなる成長に貢献できると確信している」と抱負を語った。2004~2009年の日本勤務時には原田氏の下でマーケティングを担当。「えびフィレオ」などをヒットさせた経験を持ち、原田氏の信頼も厚い。
原田氏は会見で、海外のマクドナルドとの連携の必要性を強調した。カサノバ氏のグローバルな手腕に期待しており、「私がベストタレントだと彼女を指名した」と明かした。カサノバ氏を招くことで海外でのメニュー展開やマーケティング手法、店舗運営のノウハウなどの導入を加速させるのが狙いというわけだ。事業会社の通常業務と海外との連携をカサノバ氏が担当し、それを原田氏が支えることで二人三脚の経営を進めるという。
海外との連携を深めることで立て直しを図る
今回のトップ交代で経営改革を図ることになった背景には最近の販売不振がある。
原田氏は2004年に日本マクドナルド社長に就任すると、100円マックの展開や不採算店の閉鎖などを積極的に行って収益基盤を強化し、業績を立て直したことは広く知られる。2002、2003年12月期と2年連続の最終赤字だったのを黒字へと転換させ、営業利益は2006年12月期から6年連続で増益を記録した。しかし、定番商品の重視で新商品の投入が減ったことなどから、2012年12月期には9年ぶりの減収減益となり、2013年12月期も2年連続の減益となる見通しだ。
こうしたことから、長引くデフレで外食産業に低価格路線が定着する中、原田氏のワンマン体制から脱して海外のマクドナルドとの連携を深めることで立て直しを図ることにしたとみられる。原田氏としては、余力を残してのバトンタッチを図ったとみられる。
ただ、日本には多様な外食産業があり、コンビニも弁当や総菜に力を入れ、外食産業を脅かしている。こうした激しい競争が続くだけに、カサノバ氏率いる新生マックが海外の手法など、どんな新機軸を打ち出してくるか、業界内外の注目が集まる。