秋田書店の読者プレゼント水増しは、発覚した女性向け月刊漫画3誌で8年も続けられるほど常態化していたことが分かった。消費者庁に告発した元女性社員(28)は、罪をなすりつけられて解雇されたと言っていると報じられたが、秋田書店側は否定している。
消費者庁が水増しを認定したのは、2010年5月から12年4月までの発売号だった。たとえば2人に当たるとされていた「ニンテンドー DS Lite」はだれにも送られず、50人に当たるとされていたヘアクリップは3人にしか発送されなかった。こうした不正はについて、元女性社員は、07年に入社したときに先輩から引き継ぎを受けたと証言したと報じられている。
問題の3誌では、8年も水増しが続けられる
報道によると、元女性社員はこのとき、水増しを止めるよう上司に訴えたが、会社に残りたければ指示に従うようにと言われた。その後、水増しを続けることに悩んで体調を崩し、11年9月に休職した。すると、12年3月になって、読者プレゼント用景品を盗んだなどとして解雇されてしまった。元女性社員は、盗んだことはないと言っており、近く解雇撤回を求めて秋田書店を提訴する考えだという。
元女性社員の言うように、水増しは常態化していたのか。
秋田書店の総務部では、取材に対し、問題の3誌では、05年ごろから水増しを行っていたと認識していることを明らかにした。3誌以外では、水増しはなかった認識だという。水増しした理由については、プレゼント用景品のメーカーが不況で無償提供してくれないようになり、自前で用意しなければならない苦しい状況になったからだと説明した。
水増しは、3誌の編集長も知っており、組織ぐるみでやっていたことも認めた。ただ、会社ぐるみであることは否定した。結果的に会社として責任を重く受け止めているとしたが、幹部の処分などはしておらず、今後も分からないという。
少なくとも3誌で水増しが常態化していたことが分かったが、消費者庁では、どう考えているのか。
告発の元女性社員が提訴すれば不利な状況に?
この点について、消費者庁の表示対策課では、2005年ごろから水増しがあった可能性は認めた。しかし、時間が経っていたこともあり、事実認定するには十分な証拠を集められなかったと答えた。
ところで、労組の首都圏青年ユニオンによると、元女性社員は、解雇された後に組合員になり、12年夏に秋田書店の水増しを消費者庁に告発している。解雇されたのは、水増しを告発しようとしたことと何か関係があるのか。
秋田書店の総務部では、元女性社員が内部告発しようとしたから解雇したことについては明確に否定した。罪をなすりつけたこともないという。景品を盗んだ証拠があるのかや、なぜ刑事告発しなかったかについては、弁護士に一任しているため今はコメントできないとしている。12年4月で水増しを止めたのは、社内チェックで発覚したからだといい、元女性社員とは直接関係がないとした。
ただ、もし元女性社員が提訴した場合、秋田書店は、不利な状況になる可能性もあるようだ。
テレ朝系「モーニングバード!」では13年8月22日、元女性社員が「私は景品を盗んでいません。盗んだ証拠でもあるんですか」と質したところ、秋田書店は「盗んだ証明をする必要はない」と話した、と報じた。これに対し、番組に出演した大澤孝征弁護士は、「証明責任は企業側にありますね。証明しないと、解雇は無効という結論になってしまいます」と指摘した。オークションに出した事実などがないと証明は非常に難しいといい、不利益処分をするときに本人の弁解を聞いたかも争点になるという。もし元女性社員が勝訴することになれば、内部告発との関係が再び問われる可能性も出てきそうだ。