「8月18日にインテックス大阪で行われるコミックイベントに1冊500円で同人誌を出すことになりまして、新喜劇のボーイズラブ漫画を描かせていただきました!是非よろしくお願いします!」
吉本新喜劇の芸人が先輩芸人を題材にしたBL同人誌を描き、同人イベントで販売するとツイッターで予告した。これがネットで腐女子らの怒りを買い、中止に追い込まれてしまった。
「オタクのルールを知らない芸能人が…」
きっかけはニコニコ生放送内のコンテンツ「ざわざわレボリューション」番組企画だった。番組には吉本のあまり売れていないオタク芸人が出演している。
企画は「同人誌の即売会に参加しよう」というのが前提で、そのために出演者で相談して新喜劇のBL同人誌を描くこととした。カップリングは視聴者にアンケートをとって決まった。そして日にちが一番近い8月18日のインテックス大阪で頒布することにしたという。
ここでいう「インテックス大阪」とは、同日この会場でおこなわれる赤ブーブー通信社主催の同人誌即売イベント「SUPER COMIC CITY関西19」のことだ。同人界隈では「インテ」と呼ばれ、コミケに次ぐ一大イベントになっている。
番組メンバーらは担当社員に許可を得、漫画に出演する先輩芸人らにも了承を得たとしており、いわば「公式が同人」になるわけだ。ところが、これにインテへのサークル参加を予定している人や腐女子らが疑問の声をあげた。
「ナマモノって相当デリケートだから荒らしととられても仕方がないね…吉本さんよく調べようよ迷惑だよ」
「生モノサークルさんを本人バレさせてジャンル潰す気なの?!」
原典を利用して、二次的にストーリーを作る「二次創作同人」では「公式の迷惑にならない」ことが暗黙のルールだ。実在する人物を題材にする、いわゆる「ナマモノ」ジャンルの場合はとりわけ「本人バレ」、つまり本人に知られることがないよう気を遣う。一般禁=こうしたジャンルに興味のない一般人は見ないでください、見せないでください、事務所禁=芸能人本人や所属事務所、関係者には見せないでください――といったゾーニング(閲覧購入制限)を同人誌作者やファンらがかなり厳格にかけてきた。「自分の同人誌を送って」とファンに呼びかけるT.M.Revolutionの西川貴教さんのような有名人もいるが、これは例外中の例外。番組企画はこの地雷をモロにふんでしまったというわけだ。
「オタクのルールを知らない芸能人がグレーゾーンである二次創作の本を興味本位で買い、それを免疫のない御本人や関係者に見せる可能性がある…」
イベント会場ではサークルはジャンルごとに固めて配置される。腐女子らは、番組サークルを目当てにやってきた一般人や芸能人が、興味本位で周囲の「芸能ジャンル」サークルの本を購入し、「被害」が拡大することまで懸念しているらしい。