クルマやバイクを運転するドライバー、ライダーなら、警察によるスピード違反の取り締まりに疑問をもっている人は多いことだろう。見通しのよい直線道路で交通の流れに沿って走っていても、法定速度を超えれば取り締まりの対象になる。いわゆる「ネズミ捕り」に対する反感は強い。
こんな庶民の気持ちを古屋圭司国家公安委員会委員長(自民党衆議院議員)が代弁する。古屋氏はスピード違反など都道府県警の交通違反取り締まりを見直すため、2013年8月上旬に警察庁内にプロジェクトチーム(PT)を設け、具体的な検討に着手する考えを正式に表明した。
数千通の意見寄せられたが、ほとんどは激励する内容
これには伏線がある。古屋氏は13年6月4日の閣議後の記者会見で、スピード違反など警察の交通違反取り締まりについて「事故防止が大切なのに、取り締まりのための取り締まりになってしまっている」などと発言し、物議を醸したのだ。自らも自動車を運転するという古屋氏は会見で「片側2車線、まっすぐで歩行者が出てくる危険もない道で、制限速度が50キロ。交通の流れに逆らわないように行くと70キロくらい出る。そうすると取り締まりの対象になる。やはり納得のできる取り締まりをしていく必要がある」などと述べ、新聞やテレビなどマスコミが取り上げた。
現職の国家公安委員長の発言だけに、反響は大きかった。全国紙の投書には「私も同感」と賛同する意見の一方、「人通りのない道だったら20キロ以上オーバーしても問題ないと言いたげ。交通弱者に対する視座に欠けている」と疑問を呈する声もあった。古屋氏にはメールやブログ、フェイスブックで数千通の意見が寄せられたが、「そのほとんどは激励のメール。しっかり見直してくださいという意見だった」という。
政治家としての古屋氏個人の見解ではない
古屋氏によると、スピード違反など警察の交通違反取り締まりの見直し論議は「数カ月前に国家公安委員会でも委員から提案があり、警察で調査を含めてやっている」のであって、政治家としての個人的な見解ではないそうだ。
閣議後会見の前日の6月3日には、警視総監はじめ全国の都道府県警察本部長が集う「全国警察本部長会議」があり、古屋氏は国家公安委員長として「交通取り締まりは現場の苦労も多いと思うが、取り締まりに納得がいかないという声もある。取り締まりのための取り締まりになってはならない。国民の理解を得て、事故防止に資することが原点。海外を参考に、取り締りの時間、場所の検討など見直しを行っていくべきだ」と発言していた。
具体的な見直しは、警察庁内に学識経験者やモータージャーナリスト、プロドライバーや交通安全対策関係者、道路管理者らで構成するPTを設けて議論することになる。北欧などでは歩行者ゾーンや町中の狭い場所など交通事故が起きる可能性の高い所では厳格な取り締りをしており、警察庁が視察しているほか、古屋氏は全国の都道府県警に事故の多発地点と取り締りの実態調査を進めるよう指示するなど、見直し作業は実質的には既に始まっている。古屋氏の説く「本当に事故の防止に役立ち、ドライバーが納得できる取り締り」が実現するのか。今後のPTなどの動きから目が離せない。