トルコのシェフアソシエーション会長が、長崎のB級グルメ「トルコライス」に難色を示した、というニュースがネットで話題になっている。
トルコライスにはトンカツがのっているが、イスラム圏のトルコでは豚肉は基本的にはタブー。そして、そもそもトルコという国と関係があるかも不明だ。
そのため、ネットでは「関係ないくせに調子に乗るな」などと怒る人が出ていた。
しかし、「真意が伝わっていない」と市の関係者は明かす。どういうことなのか。
「トンカツはトルコにはあり得ない」
長崎新聞(電子版)は2013年7月8日、「母国はトルコライスに難色」と見出しを打って、全日本司厨士協会の県会長・坂井洋司氏が13年6月に、親善目的で招待を受け、トルコを訪問したことを伝えた。
記事によると、坂本氏らはトルコのシェフ・アソシエーションの会長に「トルコライス」を披露したが、「(イスラム圏のトルコでは)豚肉は食べない」などと指摘され、「難色を示された」という。
トルコライスは長崎のB級グルメで、ピラフにトンカツとナポリタンを添え、ソースをかけたものだ。名前の由来は諸説あるが、「トリコロールライス」がなまって「トルコライス」になったのではとの見方が有力で、トルコと関係があるかは不明だと長崎市公式ホームページにも記載がある。
このニュースに、ネットで憤る人があらわれた。
「交流の場でトルコシェフにトルコライスを紹介するとかバカだろ。トルコとなんも関係ないことは知ってるだろ。とんかつがのってる料理とかイスラム教徒の地雷をわざわざ踏み抜きにいくんじゃねぇよ」
「そりゃそうだろ。トンカツはトルコにはあり得ない。事前に調べてから行けば良かったのに」
長崎市によると、こんな風に憤った人々から、問い合わせの電話もきているという。
「トルコライスはトルコ料理とはあまり関係ないのですが」
「そんなニュースにするほどのものではないよ。皆さん誤解しすぎの考えすぎ」――その場に居合わせた農政・食生活ジャーナリストのやまけん氏はブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」でこう書いている。
「俺から観たら『うーん、トルコだとこの料理はないねぇ』的な、ほんわかしたムードで酒を飲みながら話をしていたというのが真相。俺たち、何回も乾杯してるからね。『難色』っていつの話?ってかんじだ」
長崎市の市当者も、「国際親善で招待されていって話をした後、懇親会で向こうの会長さんにトルコライスを紹介したところ、イスラム圏ですから『豚肉は食べない』と当たり前のコメントをされただけです。トルコライスはトルコ料理とはあまり関係ないのですが、友好のきっかけになれば、という程度でしょう。後で報告のために取材に答えられたのが記事になったのだと思いますが、その部分ばかりとりあげられてしまって、真意が伝わっていないというか…」と困った様子だった。
なお、エルトゥールル号といえば、遭難時に現在の和歌山県串本町の住人が懸命に救助したことで有名だが、実は長崎との縁も深いそうだ。同船が日本で最初に寄航したのが長崎で、救出された船員らを見送ったのも長崎だったという。
そのため、長崎市では「トルコとのつながりを築きたい」と同船の遭難事件が起きた日を「トルコライスの日」としている。