スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの売り上げが、なかなか上向かない。2013年5月の売上高は、いずれも前年同月に比べてマイナス。食品や日用品といった日常品の消費意欲は低迷したままだ。
高級ブランドや貴金属などの好調が続く百貨店の売上高を押し上げた「アベノミクス」も、日々の生活にはまったく「無縁」の状況が続いている。
コンビニ売上高、12か月連続マイナス
2013年5月のコンビニエンスストアの売上高(既存店ベース)は、前年同月に比べて1.2%減の7130億9400万円だった。マイナスは12か月連続。日本フランチャイズチェーン協会が6月20日に発表した。
2010年秋のたばこ増税後、コンビニの売上高はたばこの増税分がかさ上げされていたが、この1年はその効果がなくなっている。そのうえ新規出店が増えているあおりで、1か店あたりの来店客が減っている。5月は来店客数も0.8%減で、12か月連続のマイナス。平均客単価は0.4%減の585.1円と、4か月連続で前年を下回った。
5月は全国的に好天の日が多く、大型連休に伴う行楽需要もあって弁当や総菜などの日配食品や、店頭調理のコーヒーや揚げ物の販売は好調だったが、売り上げアップにはつながらなかった。
スーパーも苦戦した。日本チェーンストア協会によると、5月の全国スーパー売上高(既存店ベース)は1兆492億円。前年同月比1.2%減と2か月連続で前年実績を下回った。
食料品が0.7%減。このうち農産品は2.9%減で、じゃがいもやキャベツなどの価格下落が影響した。バナナやかんきつ類も不調だった。
衣料品も5.2%減と、さっぱり。クールビズを意識した機能性肌着などが、気温が上昇した月後半に伸びたものの、紳士向けのカッターシャツやスラックス、婦人向けのシャツなどが苦戦。空梅雨でレイングッズも振るわなかった。
2012年に夏の電力不足を懸念して「省エネ家電」が好調だった、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電の国内出荷額も、5月は前年同月比5.7%減の1792億円と、2か月連続のマイナスとなった。
日本電機工業会によると、主要品目の洗濯機が15.6%減の188億円、ルームエアコンが6.6%減の691億円、冷蔵庫が5.2%減の306億円と、いずれも減った。
博報堂生活総合研究所の酒井 崇匡・主任研究員は、「ルームエアコンなどは天候の影響を受けやすく、今年は現状では落ち着いている状況です」と話している。
円安、インフレ、「消費に対してポジティブ要因にはならない」
生活者の消費動向を、「消費意欲指数」と「デフレ生活指数」(安く買いたい、安いサービスを利用したいという欲求を指数化したもの)から分析している博報堂生活総合研究所によると、2013年6月の消費意欲指数は48.3点、デフレ生活指数は61.2点で、「消費意欲に変化はなかった」としている。
ボーナスの支給がはじまる6月は消費意欲が喚起されてもよさそうだが、将来の物価上昇や消費増税への負担増が予想されるなか、ボーナスへの期待もさほど大きくないようだ。
一方、デフレ生活指数は男性40歳代や女性50歳代で上昇。前出の酒井 崇匡・主任研究員は、「アベノミクスによる円安は、庶民にとって『輸入品の値段が上がるのではないか』『インフレで物価が上がるのではないか』といったビハインドな流れにしかなっていません」と話す。
なかでも、年金生活者にとっては「円安や物価上昇は、消費に対するポジティブ要因にはなりません」と指摘。節約志向が続いているとみている。