未成年者が政治家のつぶやきを「リツイート」すると、逮捕されるかも? ――ネット選挙運動解禁を前に、こんな話が持ち上がっている。
発端となったのは、総務省が未成年向けに公開しているチラシだ。以前から公開されているものだったが、2013年6月中旬ごろからツイッターなどで話題になり始めた。そこには、こう大きく書かれている。
「未成年(年齢満20歳未満)の方は選挙運動はできません!」
「リツイートダメですよ」
リツイートも「選挙運動」になる
公職選挙法の改正に伴い、7月の参院選からは、候補者や政党、そして有権者が、ウェブサイトやツイッター、動画などを使って選挙運動を行うことが可能となった。ところがこの「解禁」には、いくつかの落とし穴がある。その1つが、未成年に関する問題だ。
未成年はもともと、公選法で選挙運動を行うことが禁じられている。実は今回の「解禁」でも、この部分は変わっていない。そのため、未成年がネット上で「選挙運動」とされる行動を取れば、公選法に抵触することとなる。
では、具体的に選挙運動とは何なのか。総務省では、
「特定の選挙で、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得さしめないために、直接又は間接に働きかける必要かつ有利な行為をすること」
と規定している。ネット関連では、「ブログや掲示板などへの選挙運動メッセージの書き込み」「街頭演説の様子などを動画サイトに投稿」などがこれに当たる。
ところが今回のチラシでは、これに加え、ツイッターやフェイスブックで投稿を拡散・共有する「リツイート」「シェア」などの行為も、選挙運動に当たるとの見解が示され、罰則の対象になると明記されている。
そもそも未成年はなぜ選挙運動ダメ?
総務省に確認したところ、「リツイートにより選挙運動のツイートを広めることは、文書図画の新たな頒布になる」との見解が返ってきた。また違反した場合には、公選法に基づき、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金の対象となるという。
しかし今やツイッターなどでは、自分が気になる、あるいは共感する投稿をリツイートすることが、ごく当たり前のように行われている。そんなご時世に、選挙に関する投稿をリツイートするだけで「選挙違反」とは、あまりにも時代錯誤ではないか――堀江貴文さんがツイッターで「相変わらずのカス対応」と切り捨てたのをはじめ、ネット上では批判が噴出した。
禁止を是認するにしても、膨大なユーザーの中から「未成年」を特定し違反を洗い出すことなど不可能ではないか、とその現実性を疑う声も少なくない。
そもそも未成年の選挙運動が禁じられているのは、「心身ともに未成熟な未成年を保護するため」(総務省)だという。クリック1つでできるリツイートを禁じることが、その趣旨に適うことかどうか。元NHKアナの堀潤さんは、ツイッターで「ぜひこれを機に10代の政治参加に関する議論と前向きな制度改革を促したい」と提言している。