鹿児島県の伊藤祐一郎知事が提案した、1000人の県職員を中国・上海へ派遣する「短期特別研修事業」が波紋を広げている。
一人あたり11万8000円。総額1億1800万円にのぼる研修費用は、県が負担する。共産党県議団が鹿児島市内の繁華街で行った街頭アンケート(1時間で291人が協力)では、9割以上が「反対」と答えた。
「上海路線の維持がきわめて危機的な状況にある」
鹿児島県の伊藤知事は県議会が始まった2013年6月7日の施政方針演説で、国内外からの観光客の誘致を進めることで県を活性化する、「力みなぎる・かごしま」を実現する、と語った。
なかでも、力を入れている海外からの観光客誘致については2012年の外国人観光客数が、同3月にチャイナエアラインが新規就航した「鹿児島‐台北」線による台湾からのツアー客の増加で、「前年を大幅に上回った」と胸を張る。
県によると、13年4月の海外からの宿泊客をアジアの地域別にみると、台湾6593人(構成比54.6%)が最も多く、「勢い」は続いている。以下、韓国2286人(18.9%)、中国615人(5.1%)、香港344人(2.9%)、シンガポール366人(3.0%)の順だ。
見てのとおり、台湾からの観光客はチャイナエアラインの「就航効果」が現れているが、中国東方航空が就航する「鹿児島‐上海」線は、さっぱり。
尖閣問題や中国の大気汚染の影響を受けて利用状況が低迷。4月以降は鳥インフルエンザの発生が加わり、「毎月数便の欠航が生じるなど、路線の維持がきわめて危機的な状況にある」と、伊藤知事は説明する。
鹿児島空港に上海への直行便が就航したのは2002年8月。中国東方航空と日本航空の共同運航便が週4往復運航し、利用者数も順調に推移してきたが、11年の利用客は1万9761人(搭乗率55.4%)。12年は1万6989人(同47.5%)と、とうとう搭乗率が5割を下回った。
そこで中国東方航空などは3月から週2往復(水・土)に減便。県が「このままでは定期便が消えてしまうかもしれない」と、焦った。1000人もの職員を上海に派遣する狙いも、ここにある。