「スマートフォンやタブレットさえあれば、カーナビはいらないよね」――最近、そんな声を聞く機会が増えた。
それが事実かはともかく、確かに地図アプリの機能向上などで、スマホやタブレットは最近カーナビ並みの実力を獲得しつつある。特に廉価なカーナビは、これに押され市場全体が揺らぐ。メーカーは機能充実などで迎え撃つが、その行く先は。
新マップはiPadの大画面にも対応
2013年5月15日、グーグルは8年ぶりに「Googleマップ」の全面リニューアルを発表した。現在、一部のユーザーにのみ試験的に公開されているが、インターフェースを刷新、より大きな画面で地図を表示できるようになるなど、視認性が向上したのが特徴の1つだ。またiPadにも完全対応、店舗情報の強化も含め、使い勝手を全体的に向上させた。以前から導入されているルート案内、また音声ナビと合わせて利用すれば、簡単なカーナビとしてはもはや十分すぎる機能とさえいえる。
もちろん、Googleマップにはリアルタイムの渋滞予測機能はないし、「抜け道」などを探すような使途ではまだまだカーナビに一日の長がある。とはいえ、博報堂DYグループ・スマートデバイス・ビジネスセンターの調査によれば、スマホの普及率は今や45.6%に達している。
いわば半分近くの人が手元に「簡易カーナビ」があるわけだ。より画面が大きいタブレット端末も、今や1~2万円もあればそれなりの性能の端末が購入できる。Googleマップ以外の専用のナビアプリでも、KDDIの「auカーナビ」のように月500円でオフラインでの使用が可能な製品も出てきており、スマホ・タブレットとカーナビの距離は急速に縮まっている。
実際、Googleマップなどにも地図データを提供しているゼンリン(北九州市)の2013年3月期決算では、スマホなど携帯端末・ネット向けサービスの売上高が前期比133.2%と成長した一方、カーナビ向け事業は微減となり、初めて売上高で逆転された。
「精度の点ではまだまだ利がある」
もっとも、こうした流れで「カーナビ」全体が危機に瀕しているのかというと、答えはNOだ。矢野経済研究所の試算(2012年)では、カーナビ市場は中~高価格機がスマホなどとの連携強化などを進めることで、むしろ今後も成長を続けることが見込まれている。
ただ、低価格帯の持ち運び可能カーナビ(PND)はあおりをまともに受けている。数万円前後で購入可能なPNDは2000年代、カーナビ界の新潮流として旋風を起こし、一時は市販カーナビ市場で多数派を占めた。ところが直後のスマホの普及で、売り上げは「急ブレーキ」。前述の予測では2015年には、出荷台数が11年の7割にまで落ちこむとされる。2012年7月には、ソニーがこの市場からの撤退を決めた。
とはいえメーカーも黙ってこの状況を見ているわけではない。パナソニックは2013年6月12日、PND「Gorilla」の新型機種を発売する。位置情報の測位に従来のGPSに加え、ジャイロ、そして準天頂衛生「みちびき」からの情報を採用した。同社の担当者は、
「測位の精度の面では、基地局を経由するスマホに比べ、こちらがまだまだ利があると思っている。今回の製品ではその精度をさらに向上させており、なんとか付加価値をアピールしていきたい」
と語っている。