損害保険各社の2013年3月期連結決算が出そろった。「メガ損保」と呼ばれる大手3グループはいずれも、グループとして過去最高の最終利益を計上。タイ洪水の発生など損保にとっては逆風続きだった前期から一転し、業績が改善。しかし、主力事業の自動車保険は赤字体質を抜け出せず、各社とも値上げに踏み切る方針だ。
海外事業が軌道に乗り始めた
「三井住友海上」と「あいおいニッセイ同和」を傘下に置くMS&ADインシュアランスグループホールディングスは、1694億円の最終赤字だった前期から大幅に改善し、最終損益は836億円の黒字に転換した。「損保ジャパン」と「日本興亜」を傘下に置くNKSJホールディングスの最終損益も、前期の922億円の赤字から、436億円の黒字に転換した。残る3メガの一角、東京海上ホールディングスは、前期に確保した最終黒字60億円が、約22倍の1295億円に急増した。
保険金の支払いが多額にのぼったタイ洪水のような大災害が少なかったほか、国内事業の縮小を受けて各社が力を入れている海外事業が軌道に乗り始めたことが寄与した。昨年来の円安は、増加傾向にある海外事業の円建てベースでの収益を押し上げた。
東京海上は約2100億円かけて昨年5月に買収した米保険会社「デルファイ」が連結対象に加わるなどし、海外部門の保険料収入は前期比46%増となり、海外の最終損益は前期の408億円の赤字から804億円の黒字に転換した。藤田裕一常務は「(最高益は)海外貢献が大きい」と語った。
アベノミクス効果の株高も追い風で、保有株の売却益も増えた。NKSJは国内株の売却益が前期比580億円増の1083億円に上った。NKSJの辻伸治専務は「円安・株高で資産運用利益が底上げされたことが業績改善に役立った」と指摘した。
ネット損保の拡大でシェア奪われる
一方、自動車保険事業の利益は改善しているが、道半ばの面がある。保険料が高い若者の自動車離れが進む一方、保険料の安い高齢者の事故が増加しているためだ。契約者から集めた保険料で保険金と事業経費をまかなえているかを示す「コンバインドレシオ」と呼ばれる指数で見ると、3メガとも2013年3月期も実質赤字と言える水準で、従来からの赤字を脱却できていない。
自動車保険は各社とも収入保険料の半分程度を占める主力事業に変わりないため、収益改善に向けて値上げに動き出した。
NKSJ傘下の損保ジャパンと日本興亜が4月から平均2%値上げしたのに続き、MS&AD傘下の三井住友海上が平均1.7%、あいおいニッセイ同和が平均1%強の値上げを10月に実施。東京海上傘下の東京海上日動も10月に平均1.9%の値上げに踏み切る。
値上げは、当面は収益改善に貢献すると見られるが、中長期的には代理店などの従来型チャンネルを通じた自動車保険離れを呼ぶ可能性もある。インターネットで買い物をすることに慣れ親しんだ若者にすれば、パソコン操作だけで割安に加入できるネット損保に契約が流れるのは自然。縮小傾向の自動車保険市場で、ネット損保の拡大でさらに大手のシェアが食い荒らされる可能性もある。