安倍晋三政権が「右傾化」しているとして国外メディアからの批判が高まる中、安倍首相が掲げる経済政策「アベノミクス」を評価する声が出始めた。政権交代から半年近くが経過して、株高と高支持率を維持していることがその背景にある。
英エコノミスト誌「鳥か?飛行機か?いや…、日本だ!」
2013年5月18日付けの英エコノミスト誌最新号の表紙には、スーパーマンの格好をした安倍首相が登場。見出しには「鳥か?飛行機か?いや…、日本だ!」の文字。まるで日本が、突然どこからか現れた救世主か何かだと言わんばかりだ。
記事では、安倍首相の就任から株価が55%上昇し、70%を越える高支持率を背景に、7月の衆院選後には法案をスムーズに通過させられることを指摘。
「彼の計画が半分しか成功しなくても、彼は偉大な首相として数えられるだろう」
とまで持ち上げた。
外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」は、5月16日に安倍首相のインタビューをウェブサイト上に掲載し、
「(首相復帰の)当初は投資家や有識者を心配させた。だが、安倍首相はすぐに日本経済復興のための野心的なキャンペーンに着手した。およそ半年が経って、彼の努力は成果が出つつあるようだ」
とした。
NYタイムズ紙は両論併記
米ニューヨーク・タイムズは5月20日の東京発の記事で、アベノミクスを特集。「『アベノミクス』という名の日本の新たな楽観主義」と題して、景気が上向いていること
「実際、多くの日本人は、物価が上がりだしたにもかかわらず賃金は下がる一方だと不満を漏らしている」
とも論評。両論併記の形を取っている。
さらに懐疑的な見方もある。香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポストは、5月17日、
「最近は北アジアの隣国との関係は冷え込んでいるが、国際投資家にとっては、安倍首相はスターだ」
と一定の評価をしながら、「アベノミクス」が金融政策、財政政策、構造改革の「3本の矢」から成り立っていることを念頭に、
「いずれにせよ、金融政策だけでは日本の問題は解決できない。安倍首相の2本目、3本目の矢が的に当たらないという心配がある」
ドイツの公共放送「ドイチェベレ」は、「これまでになく地域で孤立深める」と題して、第1次安倍内閣の際には十分な支持がないままに憲法改正を進めようとして挫折したことを指摘している。その上で、支持率や株価の高さを背景にした「ごり押し」を強く警戒した。
「今回(第2次内閣)では、安倍首相は政治サークルでも日本社会でも強固な支持基盤を築いたように見える。(1次内閣よりも)はるかに長く首相の座に留まることができ、ほぼ確実に大きな法案を押し通すことができるだろう。これは国内では歓迎されるだろうが、海外ではさらに深い対立を引き起こすだろう」