韓国の大手紙「中央日報」電子版が、安倍晋三首相を批判するコラムを掲載した。歴史認識に対する指摘は珍しくないが、今回の論法は少々様子が違う。
終戦直前に広島と長崎に落とされた原爆について、筆者は「神の懲罰でありアジア人の復讐」と書いた。多くの犠牲者を出した原爆を正当化するようにみえる内容で、波紋が広がりそうだ。
「安倍は笑いながら731という数字が書かれた訓練機に乗った」
コラムを執筆したのは、中央日報論説委員のキム・ジン氏。日本語版の見出しは「安倍、丸太の復讐を忘れたか」だが、英語版は「安倍が神の報復を呼び込む」と変わっている。
冒頭、筆者は第2次世界大戦末期に実行されたドイツ・ドレスデン爆撃と日本の原爆投下について言及。いずれも「神の懲罰であり人間の復讐だった」と位置づけ、原爆に関しては「日本の軍国主義の犠牲になったアジア人の復讐」と断言している。「アジア人」の中でも特に、旧日本軍の「731部隊」により犠牲となった「丸太」の復讐だったと強調した。
「731部隊」は「関東軍防疫給水部本部」が正式名称で、太平洋戦争中に中国・ハルビンを拠点に細菌戦の準備のため生体実験や解剖を行ったという。生体実験に使われたのが、部隊に捕らわれて「丸太」と呼ばれた中国人や朝鮮人などだったそうだ。
「丸太」「731部隊」にわざわざ触れたのは、安倍首相が2013年5月12日、宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地で、試乗した自衛隊機の機体番号が「731」だったことに絡めたのだろう。首相側は、わざとやるわけがないと偶然性を強調したものの、韓国メディアは「731部隊を連想させる。挑発だ」といきり立った。
コラムでもキム氏は「安倍は笑いながら731という数字が書かれた訓練機に乗った。その数字にどれだけ多くの血と涙があるのか彼はわからないのか。安倍の言動は人類の理性と良心に対する生体実験だ」と、かなり立腹している様子だ。