予約していた人気レストランへ到着すると「車椅子だから」と入店拒否された―。作家、乙武洋匡さん(37)が「銀座での屈辱」として語った入店トラブルが波紋を呼んでいる。
名指しされたレストランはツイッターで事情を説明するも、「どんだけ殿様営業やねん」と批判が集中。ホームページも一時サーバーがダウンしてしまうほど大騒ぎになってしまった。
乙武さん「こんな経験は初めてだ」
事の発端は、乙武さんが2013年5月18日に投稿したこんなツイートだった。
「今日は、銀座で夕食のはずだった。『TRATTORIA GANZO』というイタリアンが評判よさそうだったので、楽しみに予約しておいた。が、到着してみると、車いすだからと入店拒否された。『車いすなら、事前に言っておくのが常識だ』『ほかのお客様の迷惑になる』――こんな経験は初めてだ」
乙武さんがこの日訪れたのは、東京・銀座6丁目にある人気イタリアンレストラン。雑居ビルの2階に位置する全12席の小ぢんまりとした店内は、所謂“隠れ家レストラン”といった趣だ。
こちらのエレベーターは2階に止まらないため、階段を利用する必要がある。乙武さんは「下まで降りてきて抱えてほしい」と申し出たのだが、店主から「それはホームページにも書いてあるんだけどね」「忙しいから無理」と断られ、結局、料理を味わうことなく店を後にしたという。
店側「車椅子の方をお断りするつもりはありません」
乙武さんは、「ひどく悲しい、人としての尊厳を傷つけられるような思いをする車いすユーザーがひとりでも減るように」と店名を公表。車椅子利用の事前連絡を怠ったことについては非を認めつつも、店主の「まるで心が感じられない対応」に不満を露にする。
一連のツイートが60万人を超えるフォロワーに届くと、ほどなくして店主のツイッターには、さまざまなコメントが寄せられた。「車椅子なら事前連絡は当たり前」という擁護の声も少なくないが、「どんだけ殿様営業やねん」「早急に接客業辞めて下さい」などの批判も多く、釈明に追われることに。
店主は謝罪した上で「事前に事情がわかっていれば入り口に近いお席にご案内して入店のストレスを軽減したり、ほかのお客様の入店時間をずらしてスタッフがご案内できる余裕を持たしたり対応させていただきました」と断った事情を説明した。またホームページ上に掲載した文章では、「決して車椅子の方をお断りするつもりはありませんし差別もしておりません」と断言し、店主と新米スタッフ1人の計2人で営業していることや、店のバリアフリー環境が悪いことなども明らかにした。
一時はサーバーがダウンするほどアクセスが集中し、知る人ぞ知る人気店が思わぬ形でネット上の有名店となってしまったが、現在では乙武さんも「ぜひ、次回は事前に車いすである旨をご連絡してからお伺いしますね!」と和解しており、騒ぎも次第に治まりつつある。