著名なIT企業には、平均勤続年数が1年と短いケースがあることが分かり、ネット上で話題になっている。これは、離職率も高いということなのか。
平均勤続年数については、各企業の有価証券報告書で見られることが多く、情報ブログ「仕事×求人」は、2013年5月8日にIT企業についてまとめた。
グリーは1年、リブセンスは1.9年と短く
勤続年数とは、会社を辞めるまでの年数を指すのではなく、現社員が何年勤めているかを出したものだ。従って、会社設立から日が浅かったり、最近になって大量採用したりすれば、必然的に平均が短くなる。
もっとも、離職率が高ければ、勤続年数も短くなるため、健全な労働環境でないことも十分にありえる。
情報ブログでは、分野別に主なIT企業を調べており、平均勤続年数は3、4年のところが多かった。企業の中には、かなり短いケースもあった。
そのうちの1つが、ソーシャルメディア分野のグリーだ。12年6月末現在でわずか1.0年になっていた。これに対し、同じソーシャルゲーム大手のDeNAは、平均勤続年数が12年3月末現在で、2.6年あった。ブログによると、ミクシィは、2.7年だった。
年数が短い企業としてほかに、最年少社長の上場と話題になったネットベンチャーのリブセンスがあった。こちらは12年12月末現在で、1.9年だ。ブログによると、この分野では、ドワンゴ3.2年、サイバーエージェント3.1年、クックパッド2.3年となっている。
年数が長い企業には、時価総額が1兆円を超えて話題になったモバイルコンテンツのガンホーが挙げられた。こちらは12年12月末現在で、4.7年だった。
歴史の古い大手企業には、平均勤続年数が20年近いケースも見られる。情報ブログでは、IT企業には、急成長していないのに年数が短いこともあったとし、「IT会社、特に新興企業の平均勤続年数は軒並み低い」と感想をつづっている。
短いのは、スキルも賃金も上がらないため?
平均勤続年数が短いIT企業は、離職率が高いということはないのか。
グリーの広報部では、離職率は公表していないとしながらも、決して大きいわけではないと強調した。勤続年数が短いのは、ここ1、2年で大量採用したからだというのだ。確かに、有価証券報告書を見ると、従業員1356人のうち、半分以上の843人がこの1年で増やした分だ。
増やした理由については、「ゲームなどのタイトル数が増えたり、企業買収したりして事業が拡大したため」としている。
同じく年数が短いリブセンスでは、設立が7年前と日が浅く、事業拡大に伴ってここ3、4年で毎年採用が多いからと広報担当者が説明した。離職者が多いことは否定している。
一方、平均勤続年数が長いガンホーでは、設立から15年も経っていることが挙げられると広報担当者が説明した。マッサージ施設やリフレッシュルームを作るなど労働環境も整えているという。DeNAがグリーより年数が長いのは、設立の時期が早かったこともあるとみられる。広報担当者は、「離職率はかなり低いと自負しています」と言う。
人事コンサルタントの城繁幸さんは、IT企業の平均勤続年数が総じて短いことについてこうみる。
「自動車などのハード系では、長く勤めてもらわなければ困ると言います。それで、年功で賃金を上げたり、自己都合で止めれば退職金を減額したりするわけです。これに対し、IT企業は、長く勤めても従業員のスキルが上がるとは限らず、賃金もフラットな傾向のままです。ですから、長く勤めるメリットがお互いになく、必然的に勤続年数が短くなります。働く人は、スキルを磨いてコンサルタント転身を目指すなど、かなり覚悟してやらないと厳しいでしょうね」