経済産業省や総務省などが発表した経済指標が相次いで改善している。円安・株高を背景に製造業を中心に業績が改善。消費も百貨店などで高額商品が売れるなど、発表された経済指標をみると景気回復への期待は高まるばかりだ。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が軌道に乗り始めたようだ。
「求人増加」で雇用も緩やかに改善
総務省が2013年4月30日に発表した3月の完全失業率(季節調整値)は、前月比0.2ポイント改善(低下)して4.1%となった。改善は2か月ぶりだが、この失業率の改善は「労働市場からの退出が増加したことによるもので、雇用情勢は足踏み状態にある」(総務省)という。
完全失業者数は前月より17万人減少したが、一方で1、2月に減少が目立った非労働力人口は17万人増と3か月ぶりにプラスに転じた。
完全失業率を男女別にみると、男性が0.1ポイント下がり4.5%、女性は0.4ポイント低下の3.5%と、女性が先行して改善している。
この日、厚生労働省が発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月比0.01ポイント上昇の0.86倍に改善し、リーマン・ショック前の2008年8月の水準に並んだ。
企業の求人意欲を反映する有効求人数も前月に比べて0.6%増と6か月連続で増加。新規求人倍率は1.39倍と前月から0.04ポイント改善するなど、明るい。なかでも、宿泊業・飲食サービス業や卸売業・小売業、建設業の増加が目立った。半面、製造業は10か月連続で前年を下回っている。
こうした雇用関連指数は、景気の変動に遅れて動く傾向(遅行指数)にある。つまり、これらが上向けば、景気が本格的な回復局面に向かったともいえるわけだ。
第一生命経済研究所主席エコノミストの新家義貴氏は、「雇用者数や就業者数は、まだはっきりとした増加には至っていませんが、雇用者数の動きに先行する求人動向が改善していることは好材料。今後は景気回復の効果が波及することで、雇用者数も緩やかな増加に向かう可能性が高いでしょう」とみている。
生産指数や消費支出も持ち直し
2013年4月30日に、3月の鉱工業生産指数を発表した経済産業省は、生産の基調判断を2か月ぶりに、「下げ止まり、一部に持ち直しの動きがみられる」から「緩やかな持ち直しの動きがみられる」に引き上げた。その背景を、同省は「円高是正で輸出が持ち直している」と指摘している。
3月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100、季節調整済み)は89.8。前月比で0.2%の上昇で、4か月連続でプラスとなった。業種別では16業種のうち8業種が上昇。なかでも化学工業(医薬品を除く)は自動車のタイヤなどに使う合成ゴム、また電子部品やデバイスはスマートフォン関連の部品の生産が伸びた。
消費支出も増えた。3月の家計調査(速報)によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり31万6166円と、物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同月比5.2%増加した。前年同月を上回るのは3か月連続。増加率は5.3%だった2004年2月以来、じつに9年1か月ぶりの高い伸びを示した。
円安・株高で消費者の財布のヒモが緩んだとみられ、腕時計や宝飾品、ハンドバッグなどの高額商品や、洋食や寿司など外食への支出も増えた。また、家の外壁工事や省エネ給湯器の取りつけ工事など、住宅の修理などにかける支出が8か月ぶりに増えている。
どの指数・調査も上向きだが、「アベノミクス」の効果は「本格化」したとみていいのだろうか――。前出の第一生命経済研究所の新家義貴氏は、「今はまだ、まだら模様といったところ。ただ、そんなに悲観することはありません。円安効果による輸出増もこの4~6月には上向くでしょうし、公共投資の効果も5、6月には現れるでしょう。ポイントは雇用と賃金の増加ですが、賃金は早ければ今冬のボーナスにも増えてくるとみています」と話す。