数か月以内に福島沖で「アウターライズ地震」の可能性 最大10メートル級津波がやってくる

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   全国で地震が頻発している。兵庫県淡路島で2013年4月13日にマグニチュード(M)6.3の地震が発生して以降、三宅島や伊豆諸島・鳥島沖をはじめ同クラスの地震が続いているのだ。

   これだけでも心配になるが、専門家は別の不安要素を指摘した。数か月以内に福島県沖で、「アウターライズ地震」と呼ばれる大津波を伴う地震が起きる可能性があるという。

福島県沖が小康状態「嵐の前の静けさ」

津波でなぎ倒されそうになりながら、かろうじて残った松林の一部(仙台市若林区荒浜、2013年3月23日撮影)
津波でなぎ倒されそうになりながら、かろうじて残った松林の一部(仙台市若林区荒浜、2013年3月23日撮影)

   電力土木技術協会によると、アウターライズ(海溝外縁部)の定義は「海溝軸の海寄りにかけて存在する、海洋プレートが地形的に隆起した領域」とある。4月22日放送の「モーニングバード!」(テレビ朝日系)では、アウターライズ地震が起こるメカニズムを解説した。

   東北太平洋側にある太平洋プレートは、陸側の北米プレートに対して日本海溝で沈み込んでいるが、急激に滑ってずれると地震となる。プレート境界面の浅いところが滑った場合、太平洋プレートに引っ張られる力がかかって亀裂が入り、海溝の外側が隆起することがある。このときに起きるのがアウターライズ地震だ。比較的まれなケースと考えられているが、断層のずれ方が垂直に近いことから隆起により海面が上昇し、津波発生の危険性が高くなる。

   過去の事例として知られるのは、1933年の昭和三陸沖地震だ。これは1896年の明治三陸沖地震が誘発したとみられ、震源は岩手県沖の日本海溝外側だった。実は地震の揺れそのものは激しくなかった。これがアウターライズ地震の特徴で、住民は「揺れが弱かったから津波も大きくないだろう」と勘違いしてしまったようだ。ところが後から津波が押し寄せ、3000人を超える死者・行方不明者を出す大惨事となっている。

   番組に出演した東海大学地震予知研究センター長の長尾年恭氏は、数か月以内に東北沖をアウターライズ地震が襲う可能性があるとの認識を示した。注目したのは、淡路島や三宅島、石垣島と全国各地で地震が頻発しているのとは対照的に、福島県沖での地震活動が小康状態にある点だ。長尾氏は「大地震の前には『嵐の前の静けさ』で地震が減る」と指摘する。予測では最大10メートルの津波が東北の太平洋沿岸一帯を襲うと述べた。

浸水対策としての防潮堤は設置済み

   福島沖でアウターライズ地震、大津波発生となれば当然、今も事故処理が続く東京電力福島第1原発が心配だ。

   東電は2012年4月27日付で、福島第1、第2原発におけるアウターライズ地震による津波の対策をまとめている。地震の規模の想定として、M8.4の昭和三陸沖地震より大きかった1611年の慶長三陸沖地震(M8.6)を採用、また福島県沖から茨城県沖にかけて津波が起きうると設定した。これをもとにした数値計算で第1原発の場合、敷地南東部から1~4号機側へ10メートル級の津波が押し寄せて浸水の可能性があるとした。そのため報告書では「仮設防潮堤の設置を検討する」とある。東電広報に確認したところ、すでに防潮堤はつくられており対策は施されているとの説明だった。一方、第2原発には主要建屋設置エリアの浸水はないとの結論が出されている。

   万一、想定を上回る津波となった場合も、第1原発では原子炉への注水手段や燃料プールの冷却機能維持の手段を確保するため、非常用電源や消防車両を高台に配備する、などと説明されている。

   とはいえ、第1原発では最近燃料ブールの冷却設備が配電盤の故障でストップしたり、地下貯水槽から放射性物質の汚染水が漏れ出したりするなどトラブル続き。水素爆発で吹き飛んだ原子炉建屋は、補強したとはいえ耐震性への懸念が残る。「モーニングバード!」でも長尾氏は、原発事故の直後に米政府が4号機の燃料プールの補強を要求したのは「アウターライズ地震による津波が心配だったから」と明かした。冷却は続けられているが完全防御されているとは言い切れない燃料プールが、再度巨大な津波に見舞われたら本当に耐えきれるのか、不安がぬぐえない面もある。

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