インターネットを使った選挙運動を解禁する改正公職選挙法が2013年4月19日、成立した。
すでに各党とも初のネット選挙となる7月の参院選への準備を進めているが、フェイスブックやツイッターを駆使して積極的に情報発信する安倍晋三首相との対比で、ネット活用に消極的な民主党の海江田万里代表に内部から突き上げの声が出ている。
「私は毛筆をこよなく愛す」
ネットをめぐる海江田代表の姿勢に苦言を呈しているのは、民主党広報委員長で参院議員の鈴木寛氏だ。
「ネットによる情報発信力に関し、安倍首相は党首クラスの中で極めて秀でている」「ネットでの発信力が(安倍首相が)自民党総裁になった原動力だった」
改正公職選挙法が参院本会議で可決成立した19日、鈴木氏は他党のトップをそう評価する一方、「民主党も海江田代表の発信力を強化していかなければならない」と指摘したのだ。
慶応大助教授だった約15年前からネット選挙導入を提言してきた鈴木氏にとって、改正法成立は感慨深いものだったはず。ところが、所属する民主党政権時代にネット選挙は実現せず、さらに党の顔である海江田代表がツイッターもフェイスブックも活用していない現状ではその表情に晴れやかさがないのもうなずける。
タレント・経済評論家としてテレビなどで活躍後、政界に転進した海江田代表は一見ネットに詳しいような印象を受けるが、実は「超」がつくほどのアナログ人間という。改正公職選挙法成立直前の18日の記者会見では、ネット選挙への戦略を質問され「私は毛筆をこよなく愛します」と抵抗感をにじませていた。
ホームページは開設し、メールマガジンを発行、「FAXニュース」の会員募集欄もあるものの、ネット上の情報発信力という点ではフェイスブックを連日のように自ら更新し、フォロワーが30万人以上に達する安倍首相には及びもつかない。
「せめてスマホくらい持ってほしい」
「7月の参院選は党の存亡をかけた戦いになる」「自民・公明の過半数獲得は許さない」
海江田代表は13年2月24日に開かれた民主党大会でこう強調したものの、活動として呼びかけたのは、ネット選挙対策ではなく、「対話と行脚を徹底する『靴底減らし運動』を行う」ことなど。
「選挙区が狭い衆院選なら靴底を減らしての『どぶ板』も理解できるが、選挙区が広い参院選ではネット活用による情報発信こそが大きな焦点になるのでは」。党関係者からはこんな声が漏れ、「せめてスマートフォンくらい持ってくれないと、ネット選挙の『何たるか』について理解できない」といった批判もある。
党広報委員長の鈴木氏は20日に自らネット放送局を開設し、今後は海江田代表も引っ張り出す意向というが、劣勢挽回の道のりは遠そうだ。