中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の「人民論壇」がインターネット上で、共産党政権に対する読者アンケートを実施したところ、批判的な回答が殺到した。「1党体制」については回答者の8割が反対を唱えた。
人民論壇は、いったんは集計結果をウェブサイト上に載せたものの、その後削除。専門家は「中国のネットユーザーによる『悪ふざけ』の側面も強く、ただちに『反体制の民意が示された』と判断するべきものではないのでは」と指摘する。
「面白い結果にしてやろう」と悪ノリするトレンド
人民論壇が実施したアンケートは、「信心・信念・信仰調査」と題されている。習近平国家主席が唱える「中国の夢」を実現するうえで、中国の国民が心をひとつにして団結しなければならないと主張し、そのうえで共産党に関して読者に4項目の質問を出したのだ。
「中国共産党には改革を推進する勇気と知恵があると思うか」「中国の特色ある社会主義を堅持し発展させるのは国民の利益にかなうか」「共産党だけが特色ある社会主義に人民を導けると思うか」「(共産党)1党が政権を担う制度をどう思うか」。これに3000人を超える回答が寄せられたが、結果は党にとって散々だった。いずれの設問にも「ノー」が圧倒的で、ことに最後の「1党体制」については8割が反対と答えたのだ。
当初アンケート結果はウェブ上で公開されていたが、2013年4月15日になって突然削除された。だがアンケート画面はミニブログ「微博」で出回り、ブログで紹介する人もいる。
この種の動きが起こると、「ネットユーザーが『体制不信』を突き付けた」とたびたび報じられてきた。だが、中国のネット事情に詳しいノンフィクション作家の安田峰俊氏はJ-CASTニュースの取材に「あながちそうとも言い切れない」と首を振る。ネット上で、政党や団体が掲げる主張に「賛成か、反対か」を問う調査があると、「ちょっと『炎上』でもさせて面白い結果にしてやろう」と群がるのが、中国に限らずネットユーザーたちの文化のトレンドだというのだ。
安田氏は、「酷似している」として過去の日本の事例を挙げた。2012年12月の衆院選に原発反対を掲げて臨んだ日本未来の党(現・生活の党)が、「ネットでプレ総選挙」と題したアンケートを実施、「原発推進に、賛成ですか」と投げかけた。党としては「反対票」を多数獲得して勢いに乗りたかったのかもしれないが、「当時の未来の党は、政策に左派的な色彩を感じさせたこともあって、『2ちゃんねらー』をはじめとした日本のネットユーザーのおもちゃにされやすい性質を持っていた」(安田氏)ことから、アンケートは「炎上」。実際の国民の民意以上に「原発賛成」が大勢を占める結果が出てしまった。むろん、これは実際には国民の「総意」を反映していたとは言い難く、「投票者の悪ノリでネットアンケートに極端すぎる結果が出た点で、人民論壇の件と同じだったと言える」と安田氏。その後日本未来の党は、理由をつけてアンケートサイトを1日ほどで閉鎖した。