大学志願者の獲得競争が激化している。2013年は、明治大学が早稲田大学を抑えて4年連続で第1位に輝いたが、ちょっとした異変も起きた。
少子化の影響で志願者数が減少傾向にあるなか、2013年の私立大受験者数は全体で前年比5.5%も増えた。そして、12年の第8位から3位に近畿大学が躍進し、10万人に迫るなど従来にない傾向も出てきた。
志願者の「地元志向」「安全志向」が高まった
2013年の大学志願者数ランキングは、ベスト3が明大、早大、近畿大。以下、日本大学、法政大学、関西大学、立命館大学、中央大学、東洋大学、立教大学と続いた。
このうち、12年よりも志願者数が増えた大学は、近畿大、法政大、関西大など。教育ジャーナリストの豊島継男氏は、「私立大の志願者数は全国的に好調でした。『大学全入時代』といわれるように、専門学校へ行くのであれば大学進学という傾向にあり、受験者が底上げされました」と語る。
また、景気悪化に伴う地元志向の強まりと、「受かりやすい大学を受験する」という安全志向が高まったことも、今年の傾向だった。
そうした中で、13年度に志願者数が多かった大学について、豊島氏は(1)新学部・新学科の設置効果(2)大都市郊外から都心部へのキャンパスの移転やキャンパスの整備による効果(3)実学志向を背景とした理工・工学、医歯薬、看護・医療系学部の志願者の増加効果(4)女子受験生の関心を高める効果(5)インターネット出願などによる受験料割引の効果――を、共通点としてあげている。
明治大学は、2013年4月にオープンする中野キャンパスに「総合数理学部」を設置したことが、「志願者数の確保につながりました」と話している。文系からも受験できるという新たなコンセプトの理系学部として受験生の注目度が高く、「新学部効果」があったようだ。
「就職支援に手厚い大学」とのイメージも定着。学生やその保護者の安心感につながって首位を守ったものの、半面、「人気で、競争倍率が上がってきたことで敬遠された」(豊島氏)ため、志願者数は前年を下回った。
公募制推薦を含めれば近畿大が全国1位?
一方、4年連続で明大の後塵を拝し、後方からは近畿大に突き上げられている早稲田大学の2013年の志願者数は、前年に比べて1759人減らしたものの、10万6768人を確保した。
早大は「(減少は)経済的な要因が大きいと思いますが、そうした中でも10万人超の志願者があり、学力も高いレベルを保てたことは大きな成果です」と話している。
早大では一般入試以外の志願者が毎年3~4割程度いる。学部ごとに選抜しているが、「学力レベルを維持できるような試験を課している」という。
早大は中長期ビジョンで、学生の「質」を高めることに注力していくことを掲げており、それためには学生数の削減も厭わない。「志願者数を競うことは意味がありません」と、他の大学とは一線を画す姿勢だ。
3位の近畿大学は、「大学OBや在学生がロンドン五輪で活躍したことや、『近大マグロ』といって農学部が難しいとされたクロマグロの完全養殖に成功したことなどで全国的に話題となる機会が多かったことが、志願者数の増加につながったと考えています」と分析している。
女子の人気がアップしたことも、志願者増に「貢献」。近畿大は「今年は9000人近く女子の志願者が増え、全志願者に占める割合も3割を超えています」という。
前出の豊島継男氏は「女子学生を意識したキャンパス整備などで成果を上げています」と指摘。志願者数の多い大学に共通する、インターネット出願も当てはまり、「近大マグロ」も実学志向に合致している。関西の私立大で医学部や薬学部がある総合大学が近畿大しかないこともある。「近畿大の志願者数は、公募制推薦を含めれば12万人に達し、明大を上回り全国1位になりそうです」と話している。
また、首都圏で志願者数を伸ばした法政大学は「今年の入試結果については現在分析中です」としている。