「クソ喰らえ 食い物から クソが出る クソ野郎 飲み水まで クソまみれ」
「この世で一番汚い国を良い国だなんて言えねえ ああ 異常 火病 アイゴー ファビョーン」
「売春ババア殺せ チョン斬れ!」
日本のある「愛国」ロックバンドが作った曲が、韓国からの猛烈な怒りを買っている。韓国人、そして元従軍慰安婦の女性に対し「殺せ」「クソ」などと叫ぶ過激な歌詞で、元慰安婦女性らから名誉毀損で告訴される事態に至った。
元慰安婦の施設にCD送付で表面化
問題となっているのは、「桜乱舞流(スクランブル)」を名乗る日本のインディーズバンドだ。「愛国バンド」を自称して2009年から活動しており、保守系団体が主催するイベントへの出演のほか、ネットなどを通じて韓国や中国を攻撃する内容の楽曲を複数公開してきた。
とはいえ、これまではごく一部の人を除きその存在は知られていなかった。ところが2013年2月28日、韓国の元慰安婦女性が共同生活する施設「ナヌムの家」に、冒頭で紹介した「チョン斬る!」のCD・DVDを自ら送りつけ、一躍内外の注目を集めることになった。
同曲はミドルテンポのギターサウンドに乗せて女性ボーカルが、「金で買うヒットチャート 反吐が出る」「エラ張り吊り目 馬鹿なスイーツ」「竹島から出て行け 東海表記を無くせ」などと、韓国への「批判」を思いつく限りまくし立てる内容で、動画版にはハングル字幕まで付けられている。
YouTubeでも楽曲は公開されているが、そのどぎつい表現には日ごろ「反韓国的」と評される2ちゃんねらーでさえ「日本の恥」と目を覆い、中には日本人を装って日本の評判を落とそうという「陰謀」では疑う人さえいるほどだ。
当然、韓国側が黙っているはずがない。「日本の極右」「卑劣な言葉のテロ」と紹介した朝鮮日報を始め、韓国メディアが相次いで報じたほか、韓国ネットユーザーからも、「日本が放射能や地震、津波で苦しんでももう二度と同情はしない」などと怒りの声が上がる。
元慰安婦女性ら8人は3月4日、名誉毀損などに当たるとして同バンドをソウル中央地裁に告訴した。
韓国で起訴されても「引き渡し」心配ない?
同種の問題としては2013年2月、ソウル・日本大使館前の「慰安婦像」に「竹島は日本固有の領土」と書かれた杭を縛り付けるなどした日本の政治活動家の男性が、名誉毀損罪に問われて韓国で起訴された件が記憶に新しい。まだ判決は出ていないが、韓国・聯合ニュースは、
「裁判で実刑が確定すれば、日本との犯人引き渡し条約に基づき身柄の引き渡しの手続きを踏む公算が高い」
と報じている。「桜乱舞流」も同様の展開になる可能性は否定できない。
もっとも実際には、彼らが韓国に「引き渡される」可能性はかなり低そうだ。というのも日本を含む多くの国では、自国の人間が罪に問われても相手国には原則引き渡さないという「自国民不引渡の原則」と呼ばれる通例が存在し、日韓の間に結ばれている「犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約」でも、
「被請求国は、この条約に基づいて自国民を引き渡す義務を負うものではない」
としているからだ。国の「裁量」で引き渡しが認められる可能性は一応あるものの、外務省の担当者もそうしたケースは「聞いたことがない」と話す。日本国内の法律で裁かれる場合は皆無とはいえないが、今のところ同バンドは枕を高くして眠れるようだ。