1970年代に男性アイドルの「新御三家」としてブレイクした歌手の野口五郎さん(57)が、ライブ映像を持ち帰れるスマートフォン向けサービスを発案して話題になっている。
「私鉄沿線」などの大ヒットで知られる野口五郎さんは、現在も地道にライブ活動をしている。ゴロー(56)の年を迎えた2012年には、9年ぶりに新曲もリリースして、ファンらから注目を集めた。
ライブ映像を持ち帰れる「テイクアウトライブ」
そして、今度は、ビジネスにつながるファンへのサービスを生み出した。ライブなどの後すぐにスマホでその映像を視聴できる、その名も「テイクアウトライブ」だ。
サービスを手がけるソフト開発会社「フォネックス・コミュニケーションズ」によると、来場者にQRコードを印刷したカードなどを配り、来場者がスマホでそのコードを読み取ると、ライブ映像などがスマホ画面で楽しめる仕組みだ。映像は、主催者がライブを撮って編集したものになる。一度読み取ると、ほかのスマホでは読み取れなくなるが、だれかにプレゼントすることも可能だ。
東京・渋谷で12年10月14日にあった五郎さんのコンサートで、テスト配布をし、13年2月10日に本格サービスを始めた。この日の男性4人組バンド「TRIPLANE」のコンサートでは、複数のカメラで撮って編集し、メンバーの汗も間近で見られるような迫力ある映像に仕上がったそうだ。
この情報が28日に一部で報じられると、ネット上では、次々に驚きの声が上がった。記事には、はてなブックマークが300ほども付いており、そのコメントでは、「実にスマートなアイディアだ」「さすが五郎」と賞賛の声が出た。「帰り道はもちろん私鉄沿線!」と、ヒット曲をもじった評もあったほどだ。
ところで、歌手の五郎さんが、なぜわざわざこんなサービスを考えたのか。
多額の特許料については「考えたことない」
野口五郎さんが7年前に発案したきっかけについて、フォネックス・コミュニケーションズの開発責任者は、取材にこう説明する。
「野口さんは、路上ライブをするアーティストがCDやDVDを自ら焼いて販売する姿を見て、なんとか歌や演奏に集中できないかと考えていました。それも最近は、CDプレーヤーなどを持っておらず、スマホを持ち歩いている若者たちが多い。そこで、歌などを簡単にダウンロードできるサービスがあれば便利だと思いついたと聞いています」
QRコードを紙などに印刷すれば、CDなどと違ってコストもかからないことになる。こうした発想が出てくるのは、五郎さんが、作曲などでパソコンを使うことも多く、ITに通じているからのようだ。
現在は、フォネックス・コミュニケーションズが芸能プロなどと話を進めており、特にブライダル業界から好感触を得ているという。結婚式を編集したエンディングムービーを持ち帰ったり、披露宴に来なかった人にそれを配ったりできるからだ。
ライブなどで配布した反応について、担当者は「『帰りの電車内で見られる』『リアルで見た感激がよみがえった』などとツイッターでつぶやく人が多く、非常によかったですよ」と話す。
五郎さんは、4年前に特許を出願し、2011年11月に登録された。成功すれば多額の特許料が入る可能性があるが、スポーツ紙報道によると、本人は前出のコンサート後に「考えたことない。僕は歌うだけだから」と説明した。フォネックス・コミュニケーションズでは、あくまで佐藤靖の本名で特許を取っており、アーティストとしてビジネスに乗り出すわけではないとしている。