戦争と平和に関する展示施設「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)が2014年度から大幅にリニューアルされることになった。ピースおおさかには、日本のアジアへの侵略についての展示にも力を入れており、「僕は(展示内容が)自虐的やんかということを言っていた」(松井一郎大阪府知事)といった批判もでていた。リニューアル後は、大阪空襲や戦後復興に展示内容が絞り込まれる見通しだ。
展示室には「中国コーナー」「朝鮮コーナー」「東南アジアの国々」…
ピースおおさかは大阪市と大阪府の出資で1991年にオープン。ウェブサイトでは、そのミッションについて「戦争と平和に関する多くの資料を収集・保存・展示するとともに、セミナー・講演会など学習と交流の場を提供」とうたっている。
館内は「大阪空襲と人々の生活」「15年戦争」「平和の希求」の3つの展示室に分かれ、「15年戦争」では「中国コーナー」「朝鮮コーナー」「東南アジアの国々」といったように、日本が行った加害行為が学べるようになっている。いわゆる南京大虐殺に関する記述もある。また、アウシュヴィッツのコーナーもあり、その趣旨を「戦争の非人間性なども取り上げています」と説明している。
これらの展示内容には90年代後半から「自虐的」との指摘も起こっており、11年には、「朝鮮コーナー」に展示されていた写真4枚の全てを撤去するというハプニングもあった。例えば「ダム建設現場のトロッコ押し」と説明されていた写真は、日本への強制連行を表す写真だとして展示されていたが、実際は朝鮮半島で撮影された、強制連行とは無関係の写真だった。また、撮影時期が間違って説明されていたものもあったという。展示内容がずさんだとして批判も相次いだ。
松井知事「僕は『自虐的やんか』ということを言っていたのでね」
開館以来リニューアルが行われていなかったこともあって、橋下徹知事(当時)は、11年9月14日の会見で
「もっと来館者を増やすために、そして教育施設となるように、発展的なリニューアルというものをやってもらいたい」
と、リニューアルを明言。大阪維新の会の議員が相次いで現地を見学し、やはり「自虐的」といった声が相次いでいた。
13年2月14日には、松井一郎知事が記者会見で、リニューアルの方向性を明らかにした。
「その(リニューアル予算をつけた)とき僕、議会におったけども、まさに自虐的やという部分も多々、リニューアル前のそういう展示物に対しては、そういう声もありました。そういう声も全て取り入れて、新しいピースおおさかをつくるということです」
「戦争の悲惨さ、大阪大空襲の被害者の皆さんの慰霊、そういうものを考慮してリニューアル」
と、空襲の被害に力点を置いた展示になるようだ。松井知事自身も、
「当時、議会にいるときは、僕は『自虐的やんか』ということを言っていたのでね」
と、展示内容には違和感を持っていたようだ。
リニューアルをめぐっては、アジア侵略に関するコーナーを残すべきだとの声も根強く、12年6月には大学教授らが
「過去の対外戦争によりアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えたことなどの厳粛な加害事実を相対化し、被害当事者を辱めるようなことがあってはなりませんし、戦争放棄の憲法の精神を否定する展示とならない明確な措置が取られなければなりません」
と、リニューアルを危惧する声明を発表。署名運動も行われた。