日本放送協会(NHK)は、職員の基本給と賞与を段階的に見直し、2017年度をめどに現行水準から10%削減する。
また、従来の年功序列型から能力重視型に改めるほか、管理職の登用に試験制度を導入して人事評価の公平性を高める。さらに、地方に限定して勤務する地域職員制度を取り入れ、各地の物価水準などを考慮した給与体系を設ける。2013年2月12日に発表した。
仕事の成果でメリハリをつける
NHKが、職員で構成する日本放送労働組合に対して提示した新たな給与制度の柱は3つ。管理職の基本年俸と一般職の基本賃金(基本給と賞与)をおおむね5年で10%削減すること、副部長級以上の管理職を登用するにあたり試験制度を新設すること、全国への転勤がなく地域限定の給与体系で雇用する「地域職員制度」の導入で、このほかに2013年度から手当の一部を廃止するなどで人件費を抑える。
NHKは「やれるところから、やっていきたい」と話し、労働組合の合意を得られしだい、2013年度から実施していく考え。NHKによると、現行の給与体系は年功序列の色合いが濃く、職員の転勤を考慮して、地域を問わずに一律の処遇で支給していた。「給与体系の見直しや地域職員制度などの詳細はこれからですが、たとえば地域職では採用は一律に実施して、その際に全国への異動が可能な人と地域職とを分けることを考えています」と話している。
定期昇給を抑えながら、仕事のやり方や成果を給与に反映させてメリハリをつけることで、職員のやる気を引き出す狙いだ。
給与削減については、NHKの職員数は約1万人。現行の給与水準は、給与総額を職員数で割った平均年収で1185万円(2011年度決算時)。大卒35歳のモデルケースで年収733万円(12年度)となっている。
これをおおむね10%削減することになるが、NHKは「一律にカットするわけではありません」と、具体的な内容については労使交渉によって決まってくると説明している。
フジテレビ平均年収1510万円、次いで日本テレビ1426万円
NHK職員の給与水準については、国会でも取り上げられている。「受信料の引き上げ」が問題になった2011年9月には、NHK元職員の小宮山洋子厚労相(当時)の参院予算委員会の答弁で、NHKの職員の平均給与は1041万円ということを明かした。
また、12年3月の衆院予算委員会では、NHKの退職手当・厚生費などを含めた一人あたりの人件費(11年度)が1780万円にのぼることがわかった。
しかし、これらの数字は総人件費を、単純に全職員数で割り算したにすぎない。
一方、民放キー局の2011年度の給与水準をみると、フジテレビが最も高く、平均年収で1510万円、次いで日本テレビの1426万円、TBSが1378万円、テレビ朝日1304万円、テレビ東京1287万円となっている(いずれも、12年3月期有価証券報告書)。
前年度と比べると、日本テレビの93万円増、フジテレビの67万円増、テレビ東京の53万円増といずれも増えていて、NHKの1185万円をも上回っている。