福岡市の「カワイイ区」に「女性はかわいくあるべきだといった意識を助長する」といった苦情が出ている。
条例にもとづいたもので、計4件。これを受けた市の審議会では、「(カワイイ区の)廃止を含めて見直し」という文言も飛び出した。
市では答申が出ていない現段階では「なにも決まっていない」としているが、ネットでは「4件でパーか」「少数意見に配慮しすぎだろ」などと疑問の声があがっている。
「女子はカワイイが望ましいとのメッセージを税金を使って発信することは許されない」
「福岡『カワイイ区』消滅? 『差別助長』苦情受け見直し」――朝日新聞(電子版)は2013年2月9日こう見出しを打った記事を掲載した。福岡市のPR事業「カワイイ区」に、男女共同参画の条例手続きにもとづき、計4件の苦情が寄せられたため、市長の諮問機関である審議会が部会で事業見直しを検討する方針を固めたという内容だ。
報道を総合すると、苦情は「女性はかわいくあるべきだといった意識を助長する」「女子はカワイイが望ましいとのメッセージを税金を使って発信することは許されない」といったものらしい。
「カワイイ区」はアイドルグループAKB48の篠田麻里子さん(26)が区長を努める仮想の行政区。市が電通に987万円で委託し、12年8月に設置した。インターネット上で誰でも無料で「区民」登録でき、1枚300円で特別住民票も発行される。区民は12年11月1日の時点で4万人を超えた。
区公式サイトによれば、「カワイイ」は「容姿ではなく、感情表現が豊か、明るく人なつっこい、いきいきと輝いている、情に厚いなど、考え方、話し方、振る舞いすべての要素に用いられるもので、人をいとおしい気持ちにさせるすべての魅力・センス」を指し、福岡の魅力そのものなのだという。
「カワイイ区」には地元企業などから「一緒に事業をしたい」などと150件以上の申し出が寄せられ、一般市民からも市政への関心向上を含めよい反応を得ている、と市担当者は話す。
「カワイイ」といえば経済産業省が設置する「クール・ジャパン室」でも重要な位置を占める日本の文化で、海外に発信する「輸出品」でもある。そんな「カワイイ」を冠した事業が、4件の苦情で見直し方針とは、いったいどういうことなのか。
「膨大な金使って誘致したのに4件の苦情でパーか」「4件フイタww 少数意見に配慮しすぎだろ」
2ちゃんねるなどのネットでは、こんな疑問が噴出している。
過去には「ミス福岡」が「親善大使」にかわった例も
実は、一つの事業に4件もの苦情が来るのは、条例手続きにもとづくものに限れば、福岡市では「異例」といえそうだ。
市の男女共同参画を推進する条例は、26条で
「市長は、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策又は男女共同参画の推進に影響を及ぼすと認められる施策について、市民等から苦情の申出があった場合は、福岡市男女共同参画審議会の意見を聴いたうえで、必要に応じて、適切な措置を講じるものとする」
と定めている。
市の男女共同参画課によると、この条例にもとづく苦情は「カワイイ区」に寄せられたものを含めても、2006年からこれまでに計9件しかない。
このうち今回と類似する事例として、観光PR事業としておこなっていた「ミス福岡」の「ミス」という言葉が、一般的には容姿を基準とする印象を与えるもので好ましくないとの申し立てを受け、「親善大使」にかわったことがあるそうだ。
では、「カワイイ区」は本当になくなってしまうのか。12日、市の担当者にJ-CASTニュースが話をきくと、「なくなるかもしれない」との報道については「記者の方が実際に会議で出た意見をきいて、そう判断されて書かれたのでしょう」と否定も肯定もしなかった。
ただ、9日にあった男女共同参画審議会の部会で「廃止も含めて大幅な見直し」といった言葉が出たことは認めた。その上で、21日にふたたび同じメンバーで審議した上でとりまとめられる答申が出るまで、どうなるかはまったくわからないと強調した。
「カワイイ区」事業を担当する市広報戦略課も、「審議の結果を待ちたい」とコメントするにとどめた。現時点では通常通り、来年度の事業予定をたてているという。