中国海軍艦船による海上自衛隊護衛艦などへの火器管制レーダー照射をめぐり、同様の危険な事態は尖閣諸島が国有化される以前から起きていたという報道が出ている。
朝日新聞や日本経済新聞などが2013年2月7日までに相次いで報じた。当時の民主党政権は日中関係に配慮して公表しなかったとされる。ただし、7日夕になっても、政府はこのことについては言及しておらず、一切報道しないメディアもある。
「官邸に情報上げたが政治判断で公表されなかった」
「尖閣国有化前も照射」――。こうした見出しで朝日新聞は2月6日夕刊に、次のような記事を掲載した。
「東シナ海での中国軍による自衛隊への射撃用レーダー照射が、野田政権が2012年9月に尖閣諸島を国有化する前にもあったことがわかった」
「同じ海域で複数回、照射があった」
記事の情報源は政府関係者とされ、照射時間は13年1月30日の「数分間」より長い時間だったこともあるという。
日経新聞は2月7日付朝刊で報道した。照射の事実を公表しなかったことについて、「当時の野田佳彦首相や岡田克也副総理らは『日中関係を悪化させたくないとの判断で公表を避けた』と関係者は見る」と記している。
尖閣国有化以前からのレーダー照射問題に関しては、テレビも時間を割いて取り上げた。
関西テレビが2月6日夕に放映した「スーパーニュースアンカー」では、水曜コメンテーターの独立総合研究所所長・青山繁晴氏が「複数の政府当局者からの話」として、
「民主党政権下でも複数回、射撃レーダー照射があった」
「海上自衛隊は官邸に情報を上げたが政治判断で公表されなかった」
とコメントした。
青山氏はさらに
「中国は尖閣国有化を口実に緊張を高めてきたと思っていたけど、実はレーダー照射は国有化以前から行われていた」
「海自の護衛艦だけでなく潜水艦も、中国軍潜水艦によってレーダー照射と同じレベルの危険な目に遭っている」
などと語った。
口は災いの元?民主がさらなる窮地に
2月7日の「やじうまテレビ!」(テレビ朝日系)には民主党・野田政権時代の12年6月から12月末まで防衛相を務めた森本敏氏がゲスト出演し、尖閣国有化前のレーダー照射問題について質問に答えた。
「この問題について森本さんは事実を把握されてたんですか?」との男性アナウンサーの問いに、森本氏は当初「知りません」とコメントするのみ。
「あっても言えない、という話なんですか」と突っ込まれると、あいまいな言葉ながらも
「いや、あの、そういうことではなくて、きちっと大臣に報告すべき内容であれば上がってくると思います。忘れている訳ではありません」
「まあ、あの、分析をしている間に、『これは(大臣に)上げるに至らない』という風に判断した、ということだってあり得ると思います」
と語った。
尖閣周辺の状況について森本氏は「この緊迫感は明らかに、日本が12年9月、国有化をしてからのこと。それ以前は、尖閣周辺に中国の公船が侵入して領海侵犯をしたというのは1年に1度ぐらい。それが国有化して急速に艦艇・航空機の動きが激しくなって、尖閣諸島に接近してきましたから…緊張感は9月11日以降、ということだと思います」と述べた。
民主党の海江田万里代表らは、マスコミ各社が報じた同党政権下でのレーダー照射問題について、どう説明するのか。同党幹部はこぞって今、13年1月発生の2件の事案公表が遅れたことについて、「自民党の隠蔽体質」などと批判していた。