高橋洋一の自民党ウォッチ
そもそも「産業政策」はいらない 「無為無策」から「有害無益」の恐れ

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   安倍政権の経済政策は3本柱だ。金融政策、財政政策、そして「産業政策」。金融政策はインフレ目標がベースだ。インフレ目標は先進国ではどこでも採用されている政策で、日本は10年から20年遅れでようやく追いつこうとしている。これは世界標準になるので、いい方向だ。

   財政政策については、国土強靱化という公共投資が軸になろうが、国際標準であるコストベネフィットをきちんとやれば、これも文句は言えない。ただし、これまでの日本の公共投資はコストベネフィットを無視したものが多かった。さらに、公共投資は金融政策と併用しないと効果が出ないというのが経済学のセオリーだ(マンデル=フレミング効果)。1990年代、公共投資を乱発しても、円高がすすむだけで公共投資の有効需要は増加したが、一方で輸出は減少し、全体ではマクロ経済効果がなかったのは、理論通りだ。

「産業政策成功」の神話

   ところで、3番目の柱である「産業政策」では、先進国では例がまずない。というのは、政府がミクロ的な介入をするだけの能力がないからだ。「産業政策」というと立派な政策と思うかもしれないが、実は英語で説明できない。「industrial policy」 といってもわからない。実は「産業政策」に相当する英語がないが、それは、「産業政策」に相当する政策は開発途上国での「幼稚産業保護」くらいしかないからだ。

   かつて日本で「産業政策」によって高度成長したという神話があるが、最近の研究では、日本的な産業政策の効果はなかったというのが定説だ。城山三郎氏の「官僚たちの夏」は、「産業政策」を過度に美化しているが、それは小説の中の世界だ。

   「産業政策」について、政権にこうした知見があれば、せいぜい「無為無策」のレベルに押しとどめておけば、意味はないが害もないということになる。実際、筆者が参加した小泉政権では成長戦略なるものを作っていない。経産省から、ほとんど自分のところの組織拡大・予算獲得のために、さまざまな「産業政策」が経済財政諮問会議に持ち込まれたが、無碍に断ることも角が立つので、すべて、「がらくたコーナー」という一番最後のところに押し込んで、害がでないようにした。

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