衆院選で惨敗を喫した日本未来の党は、小沢一郎氏が「壊し屋」の本領を発揮する形で分裂することになった。小沢氏が結党に関与した政党が解党したり、分裂したりするのは、これで5回目だ。
「未来」は小沢氏が主導する「生活の党」に衣替えして再スタートするが、早速、古巣の民主党との連携を模索しているとの指摘も出ている。
政党交付金の大半は小沢系が受け取る
嘉田由紀子代表と旧「国民の生活が第一」系の議員との対立が決定的になったのは首相指名選挙が行われた2012年12月26日だ。同日、嘉田氏は未来の党を「分党」する意向を表明した。だが翌12月27日に総務省に届けられた内容は、党名を「日本未来の党」から「生活の党」に、代表者を嘉田氏から森裕子参院議員に、それぞれ変更するというもの。嘉田氏は離党して新党を結成する。森氏は「未来」では副代表を務め、小沢氏と近いことで知られる。嘉田氏側も森氏側も「円満な分党」を強調するが、実体は「小沢氏が母屋を奪った」のは明らかだ。
新党には、嘉田とともに離党する社民党出身の阿部知子衆院議員と環境学者の飯田哲也氏が参加する見通しで、「非・小沢系」が集まる。だが、国会議員は比例で復活当選を果たした阿部氏だけで、国政政党の要件を満たさないため、政党交付金を受け取ることはできない。政党交付金の交付額は1月1日時点の所属国会議員数などで決まるため、「未来」の政党交付金の大半は、「生活」側が手にすることになる。
参院の決選投票で8票を海江田氏に投じる
焦点は、今後の小沢氏の動向だが、「古巣の民主党にすり寄る」との観測も早速出ている。伏線のひとつが、首相指名選挙での参院での投票だ。「未来」は投票直前の両院議員総会で、森氏に投票することを決めていた。だが、参院の1回目の投票では自民党の安倍晋三総裁が過半数を獲得できなかったため、決選投票に。決選投票の結果は、安倍氏107票、民主党の海江田万里代表96票、無効1票、白票30票。森氏を含む「未来」所属の8人の参院議員は、海江田氏に投じていた。森氏は、就任挨拶のために「未来」の国会控室を訪れた海江田氏に対して、このことをアピールしてもいる。
民主党の輿石東参院議員会長(前幹事長)は記者会見で、この点について問われ、
「そういう意味合いは何を意味するのかということも、推測できるんじゃないですか?」
と発言。今後の連携に含みを残した。
だが、野田佳彦前代表時代に民主党から離党した大量の小沢系議員は、今回の衆院選でほぼ「壊滅」。民主党は「筋肉質な党に体質が改善した」ことをアピールすることに余念がないだけに、小沢氏との連携には拒否感が強いとみられる。
その筆頭格だと考えられているのが菅直人元首相だ。菅氏は12月27日にブログを更新し、
「小沢さんは『子分』か『敵』しか作らない人。使いこなすのは不可能。『原発ゼロ』も小沢さんにとっては生き残るための一時的戦術」
と、小沢氏を切り捨てている。