経済的な理由で歯科医療を受けられない患者が多いことが、2012年に行われた様々な調査から明らかになった。開業医団体である全国保険医団体連合会 (保団連=住江憲勇会長) が2012年12月20日、東京で開いたマスコミ懇談会で対策の重要性を問題提起した。
被災地で自己負担を免除したら患者が増えた
保団連は 9、10月に会員の歯科医約3300人を対象に、今年4~8月の受診状況などの調査を行った。前年同期と比べて「患者が減った」が45%、「変化なし」36%、「増加した」16%だった。 4月から診療報酬が若干上がったものの39%は「減収になった」と答え、その原因の84%は「患者減」、32%は「材料費」だった。
医師も含めた別の受診調査では、「最近半年間で、経済的理由が原因と思われる治療中断事例」が「あった」と答えた歯科医は64%、「なかった」は10%で、医師の「50%」「20%」とくらべて明らかに多かった。
東日本大震災後、被災した人たちは 12 年 9月末まで保険医療費の自己負担が免除された。傘下の宮城県保険医協会が 4月に歯科医の会員に聞いたところ、震災後に患者が「少し増えた」49%、「大幅に増えた」13%。自己負担免除患者の治療では、義歯の新製、歯冠修復、重度の虫歯、歯周病が多かった。
「免除になったのでそれまで我慢していた治療ができたと思われる患者がいる」は76%。実際に「治療を拒否し続けていた患者がこの際しっかり治療したいと来院」「合わない入れ歯を我慢して使っていた人が多い」などの具体例が報告された。
また、岩手県保険医協会が通院患者に、免除期間が終わった後を尋ねたところ、 5%の患者は「通院できない」、20%が「通院回数を減らす」とし、理由の81%が「医療費が負担」だった。
(医療ジャーナリスト・田辺功)