天然の歯と同じように噛むことができる、見た目が自然に近いなどとして、日本でもブームとなった「歯科インプラント治療」。
しかしトラブルも相次いでおり、患者数が激減、このままでは日本から消えてしまうという見方さえ出ている。
「炎症おさまらない」「手術後大量出血」トラブル絶えず
歯科インプラント治療とは、チタン製の人工歯根をあごの骨に埋め込み、それを土台として人工の歯を作製するというものだ。入れ歯と違い動くことがなく、より自然な歯の状態に近付いという特徴がある。日本では1980年代後半からインプラントの開発が進められ、2007年からは治療従事者への認定制度もスタートし、一般に認知されるようになった。
しかし治療を受ける人が増えるのに伴い、トラブルも増加した。国民生活センターは2011年12月、歯科インプラント治療によるトラブルの報告が06年度以降の約5年間で343件寄せられ、増加傾向にあると発表した。具体的には、「土台を入れて5か月経っても炎症が治まらず、抗生物質を服用し続け、精神的に参っている」、「手術の数日後大量出血したうえ、3年間も治療が終わらない。転院も認めてくれない」、「1か月で治療は終了したがゆるんで痛く、うまく噛めない」などの事例が寄せられたという。報告には「インターネット広告やホームページ、折り込み広告を見て歯科に出向いた」と書かれているものが多いが、その広告も「国内No.1の低価格」「99.9%治しきる」「開業○周年還元セール実施中!」と、虚偽や誇大、費用を強調するなど、とても医療の広告とは思えないような文章が並んでいることが明らかになった。
さらに2012年1月、NHKの「クローズアップ現代」でも歯科インプラント治療のトラブルが急増している、という特集が放送された。番組では、70代女性が治療直後に右の唇からあごにかけてしびれて感覚がなくなり、物を食べると手を添えなければこぼれる、無意識に唇を噛み度々出血する、という例、男性が抜く必要のない歯まで抜かれ、結局手術は失敗し500万円を無駄にした、というケースが放送された。