政界引退を表明したはずの鳩山由紀夫元首相が、議員続行をにおわせる発言をした。それも「日本未来の党」の衆院選候補予定者の決起集会で。
鳩山氏は今度の選挙で民主党から出ないとはいえ、まだ民主党員。「未来」から出る候補の決起集会で応援演説することは、いわば「反党行為」でもある。思わせぶりな発言が、波紋を広げそうだ。
民主党を除名された前議員を応援
鳩山氏が2012年11月28日、初鹿明博前衆院議員(43、東京16区)の出陣式に姿を見せ、
「日本未来の党こそ未来からの風」
と、滋賀県の嘉田由紀子知事が率いる「日本未来の党」を持ち上げた。一時期、初鹿氏は鳩山氏の秘書を務めていたことがあり、その縁で鳩山氏は決起集会に出席したようだ。
ただ、初鹿氏は衆院が解散された11月16日に民主党に離党届を提出。除籍(除名)処分を受け、「未来」に合流したという経緯がある。初鹿氏が出馬する東京16区には、民主党が11月28日に元国会議員秘書の今野克義氏(40)を擁立することを発表したばかり。鳩山氏によると、決起集会への出席は事前に輿石東幹事長に伝えてあったといい、輿石氏は「それで結構だ」と述べたという。
なお、鳩山氏は11月17日の時点では、
「私はもともと民主党員。民主党から立候補するのが当然だと思う」
と、民主党から出馬することにこだわりを見せていたが、11月21日には一転して出馬断念を表明したという経緯がある。
だが、それから1週間しか経っていないにもかかわらず、鳩山氏は「未来」の決起集会の場で、
「なぜ、鳩山も新しい流れに合流しないんだと思いますよね?」
と客席に水を向けた。客席からは大きな拍手が起こり、
「拍手をいただくと、その誘惑はたいへん強い」
と出馬への意欲をにじませたのだ。
もう選挙区に戻る場所はない
だが、実際には鳩山氏の退路は事実上断たれている。鳩山氏のこれまでの選挙区だった北海道9区に、民主党は11月27日、選出の山岡達丸前衆院議員(33、比例北海道ブロック)の擁立を決めている。山岡氏の父は「未来」の前身にあたる「国民の生活が第一」で代表代行を務めていた山岡賢次前衆院議員(69、栃木4区)だ。このことから、「未来」が北海道9区に「刺客」を送る可能性は低い。さらに、自民党はリレハンメル五輪銅メダリストで前道議の堀井学氏(40)の擁立を決めており、「民主王国」の打倒を目指すなど、混戦模様だ。