「めちゃくちゃハンサムな丸顔と、少年のような魅力と、たくましい肉体を備えた平壌生まれの憧れのスターは、すべての女性の夢だ」――。北朝鮮の金正恩第一書記が、「世界でもっともセクシーな男性」に選ばれたと中国の人民日報電子版が報じ、こんな選出理由を紹介した。
ところが、この企画や文章は、米国の風刺サイトのまったくの「悪ふざけ」だった。中国最大の、しかも共産党の機関紙が「釣られた」事件に、海外のメディアは抱腹絶倒、さっそくネットで「面白すぎる大失敗」として拡散している。
写真55枚ものスライドショー付きで報道
人民日報電子版は2012年11月27日、「2012年版・世界でもっともセクシーな男性」に北朝鮮の金正恩氏が選ばれたと報じた。
記事では、正恩氏を選出した米サイト「オニオン」から、「めちゃくちゃハンサムな丸顔と、少年のような魅力と、たくましい肉体を備えた平壌生まれの憧れのスターは、すべての女性の夢だ」との理由を引用した。人民日報が独自に撮影したと見られる写真55枚のスライドショーも付いていて、軍事パレードで馬に乗ったり、サングラスをかけて微笑んだり、妻を伴って施設を視察したりといった正恩氏の姿がもりだくさんだった。
これに、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、タイムといった海外の主要誌が反応を示し、相次いで記事を書き立てた。やはり、正恩氏が最高にセクシーというのに驚いたのだろうか。どうやら違うようだ。タイムは見出しに、「人民日報はオニオンに一杯食わされた」と打っていた。
実はオニオンは普通のニュースサイトではなく、風刺新聞のサイトなのだ。紙面は主要紙のパロディーや、ジョークで構成されている。「世界でもっともセクシーな男性」も米PEOPLE誌の同名の人気企画を拝借したものだ。初代受賞者はオニオン創刊者の孫の編集者T・ヘルマン・ツヴァイベル。最近では、シリアのアサド大統領やウォールストリート史上最大の巨額詐欺事件で逮捕されたバーナード・L・マドフが受賞したということになっていた。
要するに、人民日報はオニオンの「悪ふざけ」を真面目なコンテストの集計結果だと勘違いして引用した。そして結果的に「正恩氏は世界一セクシー」との見解を広めてしまった格好だ。
なぜこんなことが起こったのか。ニューヨークタイムズの取材に対し、人民日報英語版の編集者は「何も言えない」とコメントした。