有力温泉地抱える群馬、静岡県は困惑 大分県が「おんせん県」商標登録

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   「うどん県」に続いて「おんせん県」が登場――。温泉地として知られる大分県が、観光PRのフレーズとして使っていた「おんせん県」を商標登録申請した。

   だが温泉を観光の目玉とするのは大分県だけではない。「我こそ温泉日本一」を自負する各地からは、困惑の声が聞こえる。

過去には「阪神優勝」が登録されて争いに

「おんせん県」のPR用グッズ(写真提供:大分県観光・地域振興課)
「おんせん県」のPR用グッズ(写真提供:大分県観光・地域振興課)

   大分県では2012年8月28日、全国一の湯のゆう出量と源泉数を誇る温泉を中心にした観光振興を図るための「ツーリズム戦略」を策定、この中で「日本一のおんせん県おおいた 味力も満載」というキャッチフレーズを定めた。大分には、別府や湯布院といった全国的に有名な温泉地がある。

   この「おんせん県」というフレーズを商標登録申請するに至った経緯を大分県観光・地域振興課に取材すると、「仮に悪意ある第三者が営利目的で登録すると、後日『おんせん県』の名称を利用したくなっても支払いを要求される恐れがあります。それを避けたかった」と説明した。

   中国では以前、「讃岐うどん(讃岐烏冬)」や「クレヨンしんちゃん」をはじめ、日本の名産品や著作物が勝手に登録されて中国国内での事業展開に悪影響を及ぼした。国内でもかつて「阪神優勝」「がんばれ日本」といった商標を巡って争いになったケースがある。温泉を観光の柱とする大分県としては、こういったトラブルを未然に防ぐねらいがあったわけだ。

   ところが、これを聞いた他の自治体は驚いた。群馬県の大澤正明知事は11月7日の定例会見で、報道陣から大分県による「おんせん県」の商標登録について質問され、「日本一の温泉県をうたっている群馬県としては…、これは…」と戸惑った様子を見せた後、「頭を切り換えて、斬新な考えで、これから臨まなくてはいけないと思います」と答えた。大分県による登録申請は10月9日に行われたが、大澤知事が知ったのは、この時が初めてだったようだ。

   群馬県観光物産課はJ-CASTニュースの取材に、「11月12日に大分県から『経緯を説明したい』と電話がありました」と明かす。「各地と対抗したいわけではない。商標登録されても、他の地域で使ってもらって構わない」という趣旨だったという。ただ、これまでも温泉をキーワードに観光のPRを推進してきた群馬県としては、若干の不安が残るようだ。「文書のような正式な形で、商標登録後も『おんせん県』を他地域が自由に使えることを表明してほしい」と注文をつけた。「東の横綱」とも評される草津温泉がある群馬県だけに、温泉地としてのプライドは高い。

先輩格の「うどん県」は知名度アップに貢献

   温泉施設数が全国トップで、熱海や伊東といった有名な温泉を抱える静岡県も、困惑の様子だ。同県観光振興課に聞くと、担当者は「昨日(11月13日)知ったばかりで、状況をつかみきれていません」と話す。一方で、「もし、温泉の魅力を伝えるフレーズが使えなくなるようでは困ります」と打ち明けた。

   こうした他県の反応に、大分県は「(おんせん県を)独占するつもりは全くありません」(観光・地域振興課)と強調する。登録申請が通るかどうかは「5か月ほどかかる」そうだが、仮に認められなかったとしても「これまで通り『おんせん県』としてアピールを続けていくことに変わりはなく、あまり大きな問題とはとらえていません」。

   申請許可が下りた場合も、むしろ他県で積極的に「おんせん県」を利用して観光促進につなげてほしいとする。ただ事前の説明不足があった点は感じているようで、近日中に経緯を詳しく説明した文書を大分県や「ツーリズムおおいた」のウェブサイトに公開する予定だと話した。

   観光キャッチフレーズの「先輩格」にあたる香川県は、2011年に「うどん県」を名乗り話題を集めた。この年は東日本大震災の影響に加え、高速道路の無料化や「休日通行1000円」の終了で観光産業には逆風だったが、同県観光振興課は「民間の都道府県認知度調査で、前年の30位から23位に上昇しました」とその効果を強調する。「おんせん県」の場合はどうなるのか。

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