衆院の「解散風」が本格的に猛烈に吹き始めた。NHKをはじめとする大手メディアが、続々とトップ項目で「年内解散を検討」などと報じているのだ。
このまま総選挙に突入すると、民主党は壊滅的な打撃を受けるのは確実だが、野田佳彦首相の国会答弁では、選挙後に下野したことを前提にした発言も飛び出すなど、解散が現実味を帯びつつある。
野田-輿石会談で意向伝える?
2012年11月9日に、読売新聞が朝刊の1面トップで「首相、年内解散を検討」と報じた。この時点では、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を表明し、「その直後に衆院解散に踏み切ることを検討している」とされていた。
週明けの11月12日になって、他社も読売新聞を追いかける形で、年内解散の見通しを相次いで報じた。NHKは朝7時の「おはよう日本」のトップ項目で「年内解散の方向で検討」と報じ、同日の夕刊のトップ項目では、
「首相、年内解散の意向」(朝日)
「首相、年内総選挙の意向」(毎日)
と、さらに踏み込んだ見出しが並んでいる。
11月12日の報道は、11月11日夜に野田首相が民主党の輿石東幹事長と約1時間にわたって会談した結果を受けてのものだ。この会談の場で、野田首相は輿石幹事長に解散の意向を伝えたとみられている。
野田首相は、解散の時期については明言を避け続けているが、11月12日の衆院予算委員会で、特例公債法案を予算案と一体で処理することについてルール作りを行いたい考えを示した上で、
「仮に我々は野党になった時は、そのルールに従うわけですから、政局的に特例公債(法案)は使えない。ある意味の、武装解除みたいなもの」
と、下野することを前提にしているともとれる答弁をしてもいる。
次期総選挙でTPP賛成を看板に掲げる「純化路線」
だが、このまま選挙に突入すると民主党の惨敗は確実で、党内では反対論が根強い。例えば輿石幹事長は、11月9日に、
「今、解散したら(現有勢力245人のうち)50~60人しか残らない」
と、解散には否定的な立場を示している。さらに、民主党内はTPP反対派の議員もおり、解散に踏み切る前に大量に離党者が出て党が空中分解する可能性も指摘されている。それでも、野田首相は解散に突き進む理由があるようだ。
その背景を、小沢鋭仁元環境相は、11月12日昼のTBS「ひるおび!」の中で、
「総理は元々TPPは推進ですから、ある意味で言うと、これを堂々と訴えることによって、そういう意味では『純化路線』ですよね」
と解説。TPP反対派が大量離党した方が、総選挙でTPP賛成の旗印を掲げることができ、逆に戦いやすくなるとみているようだ。また、TPP反対議員は総選挙で当選する見込みが薄い人が多く、離党したところで「実害」は少ない、という見方も出ている。
また、小沢氏は、TPP交渉参加表明後の離党者数について、
「(過半数割れになる)6は軽く超えるでしょうね」
と指摘している。